情報通信研究機構(NICT)と住友大阪セメント、名古屋工業大学および、早稲田大学は、大容量のテラヘルツ波信号を光信号に変換し、光ファイバー無線技術を用いて異なるアクセスポイントに分配、送信するシステムの実証実験に成功した。
情報通信研究機構(NICT)と住友大阪セメント、名古屋工業大学および、早稲田大学は2023年5月、大容量のテラヘルツ波信号を光信号に変換し、光ファイバー無線技術を用いて異なるアクセスポイントに分配、送信するシステムの実証実験に成功したと発表した。
テラヘルツ波通信は、Beyond 5Gネットワークのアクセスポイントで、超高速データレートを得るための手段として注目されている。ただ、テラヘルツ波帯はマイクロ波帯などの信号に比べ伝搬損失が極めて大きく、長距離の送信や障害物のある環境では通信が困難になるなど、実用化に向けて解決すべき課題がいくつかあった。
NICTらの研究グループは、テラヘルツ波通信におけるこれらの課題を解決。285GHzの周波数帯で、毎秒32Gビットの大容量テラヘルツ波無線信号を異なるアクセスポイントへ透過的に分配、送信することに成功した。
課題解決に向けて、研究グループは2つの要素技術を開発した。その一つは、強誘電体電気光学結晶(ニオブ酸リチウム)を用いた高速光変調器。テラヘルツ波を光信号に変換するテラヘルツ波−光変換デバイスである。結晶の厚みは100μm以下とした。従来比5分の1以下という薄さにすることで、テラヘルツ波にも対応可能な高速性を達成した。
もう1つは、光ファイバー無線技術。テラヘルツ波信号を搬送するため、波長可変レーザーで生成した波長の異なるレーザー光を用い、波長を切り替える。これによって、テラヘルツ波信号の行き先をスムーズに変更でき、特定波長が割り当てられたアクセスポイントに配信することが可能となった。
開発した2つの要素技術を組み合わせれば、4QAM変調で毎秒32Gビットの大容量テラヘルツ波信号を直接光信号に変換して、異なるアクセスポイントに送信するための伝送システムを構築できる。テラヘルツ波の信号切り替えも、10マイクロ秒以下と極めて短い時間で行える可能性があるという。
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