本格世界進出に向け新物流拠点着工――コアスタッフ：在庫量は10倍、ZEBも実現へ

[半田翔希，EE Times Japan]

　コアスタッフは2022年12月8日、半導体／電子部品販売ビジネスの新たな基幹拠点になる物流センター（長野県佐久市）の建設に着工した。従来拠点に比べて10倍になる約100万点の在庫を保有できる能力を持ち、同社は新物流センター稼働後、事業の海外展開を本格化させる計画だ。

左＝地鎮祭の様子／右＝建設予定地［クリックで拡大］

日本発のカタログディスティを目指す

　コアスタッフは半導体・電子部品の通販サイト「CoreStaff ONLINE」を運営する半導体商社で、約10万点の自社在庫と、約600万点のオンライン発注可能在庫を保有している。

コアスタッフ社長の戸澤正紀氏［クリックで拡大］

　新物流センター建設の狙いについて、コアスタッフ社長の戸澤正紀氏は「2020年から約2年間続いている半導体不足で、半導体業界の各社はバッファー在庫を確保する重要性を感じた。コアスタッフは『日本発のカタログディスティ（通販型半導体／電子部品商社）』を目指しグローバルの各地域にも拠点を持っている。新物流センター稼働後は、グローバルの各拠点では地域ごとに需要の高い約300種の製品を置き、それ以外の製品は新物流センターから配送することで物流の効率化を図る」と説明した。同社は「新物流センターの建設に伴い、顧客の余剰在庫を受託し販売するビジネスの拡大や顧客の物流業務を受託する事業の強化も予定している」としている。

　今後の展望について戸澤氏は「半導体業界は『購買』と『物流』に人材不足の課題を持っている。団塊の世代がリタイアしていく中で購買／物流の担当者も退職し、中堅、中小企業はノウハウを維持することが難しくなっている。コアスタッフが培った購買ノウハウに加え、新物流センターを建設することで『購買』『物流』の双方をサポートしていきたい」と述べた。

やるからには「1番」を目指す

　新物流センターは一次エネルギー消費量の収支を実質ゼロとする『ZEB』（ネット・ゼロ・エネルギー・ビル）を目指す。ZEBの定義には一次エネルギー消費量の削減割合ごとに4種類あり、『ZEB』は省エネと創エネを合わせて100％以上の削減を達成するという最高水準の目標だ。

　記者説明会では戸澤氏、佐久市市長の柳田清二氏、設計・施工を請け負う大和ハウス工業の建築事業本部常務理事を務める井上富重氏が、新物流センターの機能や期待役割について説明を行った。

写真左から大和ハウス工業の井上富重氏、佐久市市長の柳田清二氏、コアスタッフの戸澤氏［クリックで拡大］

　戸澤氏は『ZEB』を目指す理由について「環境配慮（ZEB）への世の中の需要は高まっており、もはや義務といえる」とした上で、「半導体業界では年間数億円もの半導体の余剰在庫が破棄され二酸化炭素を排出している。コアスタッフは創業当初から課題感を持ち余剰在庫の削減事業をやってきた。今回の物流センターの建設計画を進める中で大和ハウス工業からZEBの提案があり決断した。最初は『Nearly ZEB』（省エネと創エネで75％以上の削減）を目指すという提案だったが、せっかくなら1番を目指したいと考え最高水準の『ZEB』を目指すと決めた」と述べた。

　新物流センターの特長について井上氏は「新物流センターは全熱交換器や照明制御などによる省エネ、太陽光発電の搭載による創エネを取り入れることで一次消費エネルギーを100％削減する『ZEB』の達成を目指す。大和ハウス工業はZEBに積極的に取り組み364棟ほどの事例もあるが、10000ｍ²以上の請負建設物で『ZEB』を達成した事例は少ない。戸澤氏と協力して先進事例を作っていきたい」と強調した。

9つの環境配慮［クリックで拡大］ 出所：大和ハウス工業

　長野県佐久市に建設を決めた理由について戸澤氏は「現在の物流センターは2007年から佐久市で稼働しているが、15年間で大きな災害に見舞われることもなく安定していた。現在勤務している約60人の社員が車で通える距離かつ安全な場所を探した時に市長から紹介されて決めた」と説明した。

　柳田氏は佐久市への波及効果について「まずは、新拠点建設により佐久市内で雇用の多様性が広がること。次に、ゼロカーボンを掲げる佐久市に『ZEB』を象徴する建物ができること。最後に、中小零細企業が多い佐久市に半導体関連の拠点ができることによる連携強化、この3点を期待している」と説明した。