私、今回のコラムの執筆に関して、年金システムの破綻について、いくつかの文献に目を通したのですが、正直にいって「良く分からん」でした。
厳密に考えれば、「年金制度の破綻」とは、(1)納税者に対する国民年金保険料の納付の停止と、(2)年金受給資格を持つ国民に対する年金の支給の停止の両方が実施され、(3)永久に再稼働しない、の3つが成立しなければなりません。
支払は停止するが、納付は続けろ ―― そんなむちゃな話が通るわけがありません。とすれば、「年金制度の破綻」とは、一体どういう状態を言うのか?
私は上記の説明において、「生存権を脅かされるまで、年金支給金額が下がった時」が、「年金制度の破綻」と決めつけて、話をしてきましたが、これは私のオリジナルの定義です。
政府は「年金制度の崩壊なんぞ、ありえない」と言い張っていますので、彼ら(政府)が、これ(年金制度の崩壊)を定義することはありません。アカデミズム(論文)や産業界の分野でも調べてみましたが、ドンピシャの文献を見つけられていません(ご存じの方は、私に教えてください)。
そこで、別のアプローチを考えてみました。「年金受給年齢が上がる」ことを持って、『破綻』と言い張るのか?です。
ところが、そもそも、年金制度では、これまでも年金受給年齢が上がり続けています。理由は簡単です。寿命が延び続けているからです。
「働いて稼げるなら、年金はいらんだろう」というのは、非常に分かりやすく、シンプルで、反論しにくい強力なフレーズです。もっとも、わが国には、定年制度という「高齢者を強制的に職場から退去」させる法律*)がセットになっており、これが年金制度と補完の関係になってきました(関連記事:「定年がうっすら見えてきたエンジニアが突き付けられた「お金がない」という現実」)。
*)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)
まあ、この法律(定年制)は、雇う側にとっても雇われる側にとっても、都合のよいものでした。雇用者は『もっと働いてもらいたいんだけど、定年制度がね……』と言い訳でき、被雇用者は『私は、まだまだ働く能力があるが、法律が禁じているから』と言い訳できるという、まあ、いわば、職場における円満離婚離職のよりどころになってきたのです。
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