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「老後の2000万円」を準備できない私のための新アプローチ 〜検討編「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(12)(5/7 ページ)

» 2023年08月21日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

2000万円分の「ソーシャルキャピタル」を作ればいいのでは?

 ここから後半になります。

 前半で、私は、

2000万円 ―― そんな金、わが家のどこにあるんだ? みんな「金がない」とか言いながら、私をダマしていたな! みんな、嘘つきだ!!

と叫んでいましたが、どんなに泣こうが喚こうが、”ない”ものは”ない”のです。

 で、最近、それならば、2000万円の代わりになるものはないか、と真面目に探し始めています。で、今、その候補の一つが、この連載で、何度かお話してきたネタの一つである、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)です。

 ソーシャルキャピタルとは、社会学や経済学などの学問領域で用いられる概念です。これは、人々や集団が相互に信頼し合い、協力し合うために持つネットワークや社会的な結びつきの資源を指します。ぶっちゃけていえば、友人、交友関係、家族、学校、会社、町内会などは、このソーシャルキャピタルという価値の製造装置である、とする考え方です。

 つまるところ、キャピタル(金)が作り出せないなら、上記の装置(?)を使い倒して、ソーシャルキャピタルなるものを製造して、2000万円に近づけばいいんじゃないの、という、身も蓋もないことを考え始めています。

 まあ、ご存じの通り、私は、孤食、読食飲み会嫌いの、人間嫌いの徹底した、「ぼっち主義者」ですので、この話(ソーシャルキャピタル)の話をしたら、家族全員から盛大にせせら笑われました。まあ、これまでの私の振る舞いを見ていれば、仕方がないことだとは思っていますが。

 が、2000万円の不足分をソーシャルキャピタルが担保できるのであれば、その不足分のためだけに、「ぼっち至上主義者」の理念を捨てるのもやむなし、と考えています。

「陽キャ=金持ち」が成立してしまうのか

 でまあ、このソーシャルキャピタルの原書とも言われている、パットナム先生の「孤独なボウリング」を読んで、自分なりにまとめてみたのですが ―― かなり嫌な結論になってしまいました。

 以下が、その読書メモです。

「孤独なボウリング」の読書メモ

 この図の最後のところに記載していますが、私なりのソーシャルキャピタルの資産的な価値とは、「誰かを助ければ、自分も助けてもらえる」が、何度も繰り返されて、実績として積み重なり、それが確信できるレベルにまで至った、ある社会(組織)における心理的状態」ということになります。

 で、まあ、ここまではよかったのです。

 問題は、そのようなソーシャルキャピタルを持っている人は、誰か? です。それを考え出したら、だんだん不快な気分になってきました。

ソーシャルキャピタルを持っている人は、誰か

 もう、私の不快の原因は明らかですよね。性格が明るく、人づきあいが得意で活発な人、つまり「陽キャ」は、「陽キャ」であるだけで、お金持ちである、という理屈が成立してしまう、ということです。

 もちろん、「陽キャ」になるように、自分の性格を改造することもできるでしょうが、私の場合、その改造コストが大きすぎて、ソーシャルキャピタルから得られる利益には、全く及ばないと思います。

 そういえば、ウェルビーイングを調べていた時にも、似たような話があった気がします。以下に、その概要を記載しますが、これも結構「不愉快」です。

SWBに関する研究結果

 生まれつきの性格、生活水準、結婚、性別 ―― これらは、私たちがコントロールできないものや、私たちの努力だけでは、どうしようもないものがあります。そして、ウェルビーイングとソーシャルキャピタルは、密接な関係があります(今回、その説明は割愛します)。

 つまるところ、ウェルビーイングとソーシャルキャピタルは、運の要素が大きい、ということです ―― これを今風に言うのであれば「性格ガチャ」「環境ガチャ」「性別ガチャ」とでも言うのでしょうか。

 ここで、再度、ソーシャルキャピタルとは何か、について考えてみました。これを単体で再検討しても、よく分からないと思いますので、普通のキャピタル(資本)と言われているものと比較してみました。

キャピタルとソーシャルキャピタル

 ここで重要な点は、キャピタルもソーシャルキャピタルも、自分の周りの環境であるということです。もちろん、環境は自分で変化させることができることもあります。しかし、基本的に自分の周りの環境を決定するのは、自分の力だけではどうしようもできない、歴史的な経緯や、地域特性、文化、制度、習慣などというものだったりします。

 今の私には、キャピタルもソーシャルキャピタルも、ほとんど同じに見えます。ですので、2000万円の問題を、ソーシャルキャピタルで引っくり返すのは、(特に私の場合には)ちょっと無謀のように思えてきました。

 ただ、私、この2000万円問題をソーシャルキャピタルで引っくり返す一つの方法論 ―― ただし、私だけにしか使えない方法ですが ―― を案出しています。次回、このアイデアについてお話させて頂ければと考えております。

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