前編に続き、電気自動車(EV)の充電インフラの動向を説明する。後編では充電方式について解説する。
ご注意
今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを強く推奨します。
前回から、「2.5.3.4 EV用インフラ(インフラストラクチャー)」の概要、すなわち電気自動車(EV:Electric Vehicle)の道路走行を支える充電インフラ(充電ステーション)の動向を前後編で説明している。今回は後編となる。
前回(前編)では、充電器には「普通充電器」と「急速充電器」の2種類があること、充電箇所には主に「基礎充電」「経路充電」「目的地充電」の3つがあることを述べた。今回は充電方式についてご説明する。
充電方式は大きく、コンダクティブ(伝導)式、ワイヤレス(無線)式、交換式の3つに分かれる。コンダクティブ方式の充電には、普通充電と急速充電がある。ワイヤレス式には、車両を停めた状態で無線によって給電する方式(ワイヤレス給電)と、車両を走行させながらワイヤレスで充電する方式(走行中ワイヤレス給電)がある。交換式は「バッテリ交換式乗用車」と「バッテリ交換式トラック」に分かれる。
これらの充電方式の中でEVの普及を左右するのが、経路充電のインフラである「コンダクティブ式の急速充電器」(以降は「急速充電器」と表記)だ。現在は30分前後の充電時間でEVのバッテリを最大容量の80%まで充電する、というイメージで利用される。近い将来には、充電時間を5分くらいに短縮したい。
急速充電器の規格は現在、主に4つに分かれている。日本の自動車メーカーが主体となって規格を策定した「CHAdeMO(CHArge de MOve)」、中国の「GB(Guojia Biaozhun)/T 27930」規格(以降は「GB/T」と表記)、欧米の「CCS(Combined Charging System)」、電気自動車大手のTeslaによる独自規格「SC(Supercharger)」である。
2020年末時点での普及状況(世界全体)は、CHAdeMOが3万6000基、GB/Tが30万基、CCSが1万3000基、SCが2万5000基とされる。中国のGB/Tが圧倒的に多いことが分かる。
将来の急速充電器の標準化に向け、日本の「CHAdeMO(チャデモ)」規格策定団体である「CHAdeMO協議会」は中国の電力業界団体である「中国電力企業聯合会(China Electricity Council)」と共同で次世代急速充電器の充電規格を共同で開発していくと2018年8月22日に発表した。そして2020年4月にはCHAdeMO規格の「バージョン3.0」を日中の共同規格「ChaoJi(チャオジ)」のコネクター仕様に準拠した設計要件として発行した。
「ChaoJi」はCHAdeMO、GB/T、CCS、SCとの後方互換性を有する規格となる予定だ。最大の特長は、900kW(1500V×600A)という大出力に対応したことで、大型トラックのEV1台を急速充電するほか、複数の普通乗用車タイプEVを同時に急速充電できるようになる。
急速充電規格「ChaoJi」が想定する用途は幅広い。出力が350kWを超える大容量充電では、船舶や土木建設機器、乗用ドローンなどを狙う。出力が50kW〜150kWの領域では、トラックや乗用車などを対象とする。出力が小さな10kW以下では自動二輪車や電動カートなど、さらに小さな800W以下では電動キックボードや電動自転車なども視野に入れる。
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