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Nordic、米AI新興のハードウェアIPを買収へハードウェアAIをデバイス全体に(1/2 ページ)

Nordic Semiconductor(以下、Nordic)は、米国のAI新興AtlazoのIPポートフォリオを買収する予定だ。Nordicは米国EE Timesの取材に対し、「当社のポートフォリオ全体のデバイスに、ハードウェアAIアクセラレーションIPを追加する計画だ」と述べている。

» 2023年09月01日 11時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

「Nordic製品シリーズ全体に適する」AIアクセラレーター技術

 Nordic Semiconductor(以下、Nordic)は、米国のAI(人工知能)および機械学習(ML)新興AtlazoのIP(Intellectual Property)ポートフォリオを買収する予定だ。同社のAIハードウェアIPおよび専門技術をターゲットとしたもので、Nordicの戦略/プロダクトマネジメント部門担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるKjetil Holstad氏は、米国EE Timesの取材に対し、「当社のポートフォリオ全体のデバイスに、ハードウェアAIアクセラレーションIPを追加する計画だ」と述べた。

Nordic Semiconductorの戦略/プロダクトマネジメント部門担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるKjetil Holstad氏 出所:Nordic Semiconductor Nordic Semiconductorの戦略/プロダクトマネジメント部門担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるKjetil Holstad氏 出所:Nordic Semiconductor

 「Nordicの顧客企業は現在、当社のSoC(System on Chip)と併せて、個別のAIアクセラレーターを使用しているが、今回の買収は、Nordic製デバイスに組み込むことが可能な技術を手に入れるチャンスになる」(Holstad氏)

 同氏は、「この買収には、まだ規制当局の承認が必要だ。しかし、全てがうまくいけば、AtlazoのIPは今後12〜18カ月程度でNordic製品に搭載されるようになるだろう」と述べた。

 Nordicの製品シリーズには、ウェアラブル医療機器やフィットネス機器などのアプリケーションに向けた超低消費電力のBluetooth、ANT、Thread、ZigBeeなどのコネクティビティを備えるワイヤレスMCUなどがあるが、同社は近年、セルラーやWi-Fiチップなどにも進出している。

 Holstad氏は、「AtlazoのAIアクセラレーター技術は、適合可能な分野に制限はないだろう。全ての製品で同じ実装にはならないかもしれないが、Nordic製品シリーズ全体に適しているはずだ」と述べる。

積極的な買収進めるNordic

 米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くAtlazoは、2016年に創設された企業だ。同社のチームメンバー8人がNordicに参加することになる。

 Nordicは2022年に、最先端のSRAMを手掛けるスタートアップMobile Semiconductorの買収を発表した。同社の低消費電力かつ低リークのメモリIPは、既にNordicのあらゆるワイヤレスIoT SoCに搭載されている。Nordicは2021年に、Imagination TechnologiesのWi-Fi IPと開発チームも買収している。

 Holstad氏は、「メモリやアクセラレーション、コネクティビティなどは全て、適切な超低消費電力を実現する上で非常に重要だ。われわれにとっては、誰よりも優れた存在になるための方法を見つけ出すことが重要で、そのためにMobile SemiconductorとAtlazoの両社の買収に至ったのだ」と述べる。

第1世代ハードウェアIP「Axon 1」

 AtlazoのAIアクセラレーション向け第1世代ハードウェアIP「Axon 1」は、Nordicの顧客基盤に対して非常に重要な、さまざまなタイプのニューラルネットワークを高速化することが可能だ。例えば、医療センサーやウェルネスセンサーなどのタイプ向けに使われているニューラルネットワークも含まれる。Axon 1は、視覚/音声/振動検出に向けたニューラルネットワークに対応も可能で、長期短期記憶(LSTM:Long-Short Term Memory)や、一般回帰ニューラルネットワークGRNN(General Regression Neural Network)の他、メル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel-Frequency Cepstral Coefficient)などの特徴抽出技術が含まれる。

 Axon 1は、Atlazoが2021年に発表したSoC「AZ-N1」でシリコン実証済みだ。Nordicは、AZ-N1の販売は継続しないが、開発中の次世代Axon IPを自社製品に統合する予定だという。

 Holstad氏は、「Nordicの視点から見ると、このIPを社内に確保することは、自社開発を推進していく上で非常に重要だ」と述べる。

 「Noricは、中核となる超低消費電力の側面において、差別化に取り組み、使い勝手の良さを追求している。他社からライセンス供与を受けたり協業することも可能だが、これは顧客にとって不可欠なものだ。そのため、この技術を保有することで、超低消費電力を確実に実現したいと考えている」(Holstad氏)

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