京都大学は、層状化合物である「二硫化チタン(TiS2)」の層間に、「キラル分子」を挿入した物質「キラルTiS2」を開発した。この物質に電流を流すと、電流中のスピンがほぼ平行にそろうことが分かった。
京都大学大学院工学研究科の辺智芸博士課程学生と筒井祐介同助教、関修平同教授、須田理行同准教授らによる研究グループは2023年9月、層状化合物である「二硫化チタン(TiS2)」の層間に、「キラル分子」を挿入した物質「キラルTiS2」を開発したと発表した。この物質に電流を流すと、電流中のスピンがほぼ平行にそろうことが分かった。
スピンエレクトロニクスは、電子が持つ「スピン」を情報として利用する技術。通常の電流中では、スピンの方向がばらばらで、磁気情報は持っていない。これに対し、スピンを一方向にそろえることで磁気情報を持たせることができる。
この電流は「スピン偏極電流」と呼ばれ、省電力デバイスや水素エネルギー製造への応用が期待されている。ただ、室温環境で100%に近いスピン偏極率を実現できる電極材料は、これまで報告されていなかったという。
そこで研究グループは、「キラル分子」と呼ばれる分子が持つ「キラリティ誘起スピン選択性」に着目した。電流がキラル構造の分子中を流れると、電流中のスピンが平行にそろうという性質である。
新たに合成したキラルTiS2について、スピン偏極率を調べた。この結果、キラルTiS2中を流れる電流の中で、約95%のスピンが同じ方向にそろっていることが分かった。この値は、鉄やコバルト、ニッケルといった材料に比べ、はるかに大きい値だという。また、挿入する分子のキラリティを右手系から左手系に入れ替えれば、スピンの向きを反対方向にそろえることが可能なことも分かった。
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