今回から、テレビ(TV)用ディスプレイの概要を紹介する。本稿では、TV用ディスプレイの市場予測と、ディスプレイ駆動TFTの種類を取り上げる。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介してきた。
第420回からは、第2章第6節第3項(2.6.3)「次世代ディスプレイデバイス」の概要を説明している。前々回(第421回)と前回(第422回)は、超大型ディスプレイの代表的なデバイス技術であるLEDディスプレイデバイスを前後編で解説した。今回からは、テレビ(TV)用ディスプレイの概要をご紹介する。実装技術ロードマップの目次では、第2章第6節第3項第3目「2.6.3.3 TV向けディスプレイ」に相当する部分となる。
「2.6.3.3 TV向けディスプレイ」は、以下の項目によって構成される。「(1)市場動向」「(2)マザーガラス基板とガラスパネル」「(3)ディスプレイ駆動TFTバックプレーン」「(4)OLEDディスプレイパネル」「(5)ローカルディミング用BLU LCDパネル」「(6)デュアルセル型LCDパネル」、である。
テレビ(TV)用ディスプレイパネルの世界市場を出荷数量ベースでみると、2021年〜2025年はおよそ2.6億台〜2.7億台で安定に推移すると予測される。そして出荷数量の95%以上を液晶パネルが占める。残りは有機EL(OLED)パネルである。生産地域別では、テレビ用パネルの約70%を中国で生産している。
出荷数量をパネル技術(液晶はバックライト技術)で分類すると、2021年の時点でパッケージLEDを光源とする直下型バックライト方式の液晶パネルが全体の79%を占めており、液晶テレビの主役であることが分かる。同方式の液晶パネルにはローカルディミングによるコントラスト比およびダイナミックレンジの向上という特徴があり、液晶テレビの画質向上に大きく貢献した。この方式は2025年でも比率は71%に下がるものの、依然として主流を占めると予測する。
過去に主流だったエッジ型LEDバックライト方式の液晶は2021年に17%を占める。液晶テレビでも低価格品にはコストの低いエッジ型バックライトのパネルが使われ続ける。2025年の予測でも比率は16%で、2021年とほぼ変わらない。
平面状有機EL(リジッドOLED)パネルの比率は2021年で2%、2022年で3%とかなり少ない。高コストだが高い画質(高ダイナミックレンジ)を特徴とするOLEDは数年前にはハイエンドの高精細テレビ用パネルで主役になると期待されていた。しかし液晶パネルがローカルディミング技術の改良(LED数を増やすことによるセグメント数の増加)によってOLEDの市場拡大を阻んでいる。
そしてハイエンドのテレビ市場ではミニLEDアレイを光源とする直下型バックライト方式による4K/8K対応液晶パネルが勢いを増しつつある。同方式の液晶パネルが全体に占める比率は2021年に2%だったのが、2025年には8%に拡大すると予測する。一方でOLEDパネルの比率予測は2025年に5%にとどまる。OLEDパネルの製造コスト低下による値下がりで数量ベースの比率は拡大するものの、ミニLEDバックライト液晶パネルの伸びには届かない。
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