SiC事業については、onsemiのパワー・ソリューションズ・グループでエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャを務めるSimon Keeton氏が説明した。Keeton氏は、onsemiがSiCブールからウエハー、サブストレート(基板)、ダイ、パッケージまで一気通貫で手掛けていることが最大の強みだと強調。「パウダー(SiC粉末)からパワー(デバイス)へ、とうたえるほど完全な垂直統合を実現している」と語った。
onsemiは、SiCの製造を手掛ける米GT Advanced Technologies(以下、GTAT)を2021年に買収して以降、SiC関連の生産能力を強化してきた。2022年8月には、米ニューハンプシャー州ハドソンの工場で拡張工事を進めてきたSiC単結晶の生産施設が完成。同年9月にはチェコ・ロズノフのSiCウエハー工場を、2023年10月には韓国・富川市のSiCウエハー工場をそれぞれ拡張している。こうした投資により、GTATの買収以降、SiCのサブストレート生産量は10倍に、ダイの生産量は12倍に、パッケージの生産量は4倍に増加したという。新製品の数も3倍に増えた。
Keeton氏は、「これまでonsemiにはサブストレートが欠けていたが、GTATの買収によりここを自社でカバーできるようになったことは大きい」と語る。さらに、垂直統合を実現していることで、エントリーレベルからハイエンドまで、顧客の要求に応えやすいとした。
El-Khoury氏は、「自動車の電動化は、数十年にわたり当社に事業機会をもたらすトレンド」だと述べ、日本でも自動車メーカーと直接やりとりするケースが増えていると語った。「これまで日本はEVの進捗が遅れているように感じられたが、最近は積極的な動きがみられる。チャンスが大きいと考えている」(同氏)
SiC市場はプレイヤーが多く、それだけ競争も激しくなっている。2023年10月には、デンソーと三菱電機が、米Coherent(コヒレント)が分社化する予定のSiC事業会社に対し、総額10億米ドルを出資することが発表された。El-Khoury氏はこの動きについて「Coherentが分社化する予定の新会社は、SiCサブストレートの販売を手掛ける。われわれは、サブストレートをあくまで自社で使用し、外部には販売しないので、(新会社は)競合にはならないとみている」と語った。
さらに、米Teslaが2023年3月に、EV(電気自動車)のインバーターに搭載するSiCパワー半導体を従来比で75%削減すると発表したことについては、「自動車メーカーが求めるプラットフォームは、エントリーレベルから超ハイエンドまで非常に幅広い。当社のSiCプラットフォームであれば、顧客の要求に柔軟に対応できる」と述べ、onsemiの戦略に自信を示した。
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