Armは、Mプロファイルベクトル演算拡張(MVE)機能を実現するため、「Arm Helium」と呼ぶアクセラレーターを搭載したプロセッサコア「Arm Cortex-M52」を発表した。小型で低消費電力のIoT(モノのインターネット)/組込みデバイスに対し、強力なAI(人工知能)機能を提供することが狙いだ。
Armは2023年11月22日、Mプロファイルベクトル演算拡張(MVE)機能を実現するため、「Arm Helium」と呼ぶアクセラレーターを搭載したプロセッサコア「Arm Cortex-M52」を発表した。小型で低消費電力のIoT(モノのインターネット)/組込みデバイスに対し、強力なAI(人工知能)機能を提供する。
ホームセキュリティやマシンビジョンなど、さまざまな用途でAI搭載のIoT機器が開発され、導入が進んでいる。こうしたIoT機器では、小型で消費電力が少なく、低コストが求められている。またシステム開発においては、その成果を最大化できるツールチェーンの活用が重要となる。
Cortex-M52は、DSP(デジタル信号処理)とML(機械学習)の性能レベルを強化した。既存の「Cortex-M33」に比べて、ML処理を最大5.6倍、DSP処理を最大2.7倍も向上させた。これにより、専用のDSPやMLアクセラレーターなどを追加することなく、Cortex-M52だけでAI搭載のIoT機器に求められる性能を実現できるという。ダイサイズはCortex-M33より30%増えるものの、上位モデルである「Cortex-M55」に比べると23%の削減となる。
セキュリティに関しては、「ポインター認証や分岐ターゲット識別(PACBTI:Pointer Authentication and Branch Target Identification)」「Arm TrustZone」など、Arm v8.1-M向けのセキュリティ拡張機能を搭載している。
Cortex-M52は、ソフトウェア開発も容易にした。Cortex-M52と同等レベルのML/DSP性能を実現するには、これまでCPUとDSP、NPU(Neural network Processing Unit)を組み合わせる必要があった。そして、チップごとにコードを記述し、デバッグ、チューニングを行う必要がある。これに対し、Helium搭載のCortex-M52は、エンベデッドコードやDSPコード、NNモデルを1つのチップで実行することができるため、同じプラットフォームで開発できるという。
Armは、Heliumを搭載した製品として既に、Arm v8.1-MベースのCortex-M55や「Cortex-M85」を供給している。Cortex-M52はこれら製品群のローエンドモデルと位置付けており、Cortex-M55/Cortex-M85とソフトウェアの完全互換性がある。このため、既存のソフトウェア/ツールのエコシステムや、Armパートナー・エコシステムから提供される無償のソフトウェアライブラリーおよび、さまざまなナレッジベースを活用できる。クラウド環境で利用できる「Arm Virtual Hardware」も用意した。これを活用すれば、シリコン(ハードウェア)が完成していなくてもソフトウェア開発を行うことが可能となる。
Cortex-M52は既に、IPやソフトウェアライブラリー、ツールチェーンなどの提供を始めている。2024年にはシリコンチップの出荷も始める予定である。
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