今回は初期の「FO-WLP」で生じた信頼性の問題と、問題を解決した組み立てプロセス、再配線層(RDL)を微細化したプロセスを解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本コラムの第433回から、第3章「電子デバイスパッケージ」の第3節(3.3)「各種パッケージ技術動向」を報告してきた。前々回は第3章第3節第2項(3.3.2)「ウェハレベルパッケージ(WLP)、パネルレベルパッケージ(PLP)、部品内蔵基板」から、「3.3.2.1 WL-CSP(Wafer Level-Chip Size Package)」の概要を説明した。続く前回は、「3.3.2.2 FO-WLP(Fan Out-Wafer Level Package)、FO-PLP(Fan Out-Panel Level Package)、部品内蔵基板」の概要(前半部分)をご報告した。
今回は初期の「FO-WLP」で生じた信頼性の問題と、問題を解決した組み立てプロセス、それから再配線層(RDL)を微細化したプロセスをご説明する。
初期の「FO-WLP」で生じた信頼性問題は、シリコンダイとモールド樹脂の熱膨張率の違いに起因する。シリコンの熱膨張係数は室温付近で約2.6ppm/℃であるのに対し、モールド樹脂(エポキシ樹脂)の熱膨張係数は30〜40ppm/℃前後とされる。10倍を超える違いがあることが分かる。
シリコンダイの動作発熱や外的環境の寒暖差などの温度変化によってシリコンダイとモールド樹脂の境界では、機械的な応力が発生する。FO-WLPの場合、境界付近のRDL絶縁層とRDL(配線層)が延びたり縮んだりする。場合によっては絶縁層や配線層などにクラックが入りかねない。
そこでシリコンダイの電極に銅(Cu)バンプを形成することで、ダイの表面をモールド樹脂で覆い、RLD絶縁層を境界面から離す構造が開発された。既に実用化されている。
上述の対策を施したFO-WLPの組み立て工程を説明しよう。「チップファースト」かつ「フェースアップ」のプロセスである。始めは、回路と銅バンプを形成済みのシリコンウエハーを裏面から所望の厚さになるまで研削し、個々のシリコンダイに切り離す。
それからキャリア(表面にはあらかじめ粘着フィルムが貼ってある)にシリコンダイ(チップ)をフェースアップで再配置する。それからキャリアのシリコンダイ側をモールド樹脂で封止する。
次にモールド樹脂を研削し、シリコンダイの銅バンプを露出させたところで研削を止める。続いてシリコンダイ表面側(銅バンプ側)に、再配線層(RDL)の誘電体層と配線層を形成する。RDLが完成した後は、モールド樹脂の疑似ウエハーからキャリアをはく離する。
ここで疑似ウエハーを裏面から研削して薄型化することもある。その場合は裏面を保護する樹脂フィルムを貼る。それから表面電極にはんだボール(外部端子)を搭載する。最後に個々のパッケージに切り離す(個片化)。
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