今回は、第3章第3節第4項「車載パワーデバイス」から、「パワーデバイスの発展」を解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本コラムの第433回から、第3章「電子デバイスパッケージ」の第3節(3.3)「各種パッケージ技術動向」を報告してきた。前回までは、第3章第3節第2項(3.3.2)「ウェハレベルパッケージ(WLP)、パネルレベルパッケージ(PLP)、部品内蔵基板」の第2目「3.3.2.2 FO-WLP(Fan Out-Wafer Level Package)、FO-PLP(Fan Out-Panel Level Package)、部品内蔵基板)」の概要を3回にわたって説明してきた。
今回は第3章第3節第4項(3.3.4)「車載パワーデバイス」の概要をご報告する。この項は「3.3.4.1 車載エレクトロニクスの開発トレンド」「3.3.4.2 電動化に向けた車載機器」「3.3.4.3 パワーデバイスの発展」の3つの項目で構成される。本稿では「3.3.4.3 パワーデバイスの発展」を簡単に解説する。
「パワーデバイス」とは、インバーターやコンバーターなどの電力変換機器およびそれらに搭載される半導体素子を指す。機能別にはパワートランジスタ(MOSFETやIGBTなど)、ダイオード、サイリスタ、トライアックなどの半導体素子があり、形態別には半導体素子(ディスクリート)、パワーモジュール(複数の半導体素子を1個のパッケージに収容したデバイス)、インテリジェントパワーモジュール(IPM:制御回路や駆動回路、保護回路などと半導体素子をモジュール化したデバイス)がある。
パワーデバイスは過去から継続して、出力密度(単位体積当たりの出力)の向上が求められてきた。1980年前後には、1cc(1cm3)当たりの出力は0.1Wにすぎなかった。それが1990年代半ばには1Wとおよそ10倍になり、2010年代には10Wとさらに10倍に向上した。
出力密度を高める方法は基本的に3つしかない。1つは出力電流を高めること、もう1つはスイッチング周波数を高めること、3つ目はヒートシンク(放熱部品)の寸法を小さくすることだ。これらの手法はいずれも単純には動作温度の上昇を招き、デバイスの寿命を縮める。そこで何らかの工夫が対策として必要となる。
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