物質・材料研究機構(NIMS)は、20%以上の光電変換効率(発電効率)を維持しつつ、実用環境に近い60℃の高温雰囲気下で1000時間以上の連続発電が可能な「ペロブスカイト太陽電池」を開発した。
物質・材料研究機構(NIMS)は2024年2月、20%以上の光電変換効率(発電効率)を維持しつつ、実用環境に近い60℃の高温雰囲気下で1000時間以上の連続発電が可能な「ペロブスカイト太陽電池」を開発したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池は、100℃程度の低温プロセスを用いて作製でき、20%以上の発電効率が得られる。このため、次世代型太陽電池として注目されている。ただ、ペロブスカイト(ABX3で記述される結晶構造)は水分と反応すれば劣化しやすく、電池の耐久性に課題があった。
NIMSが新たに開発したペロブスカイト太陽電池は、光照射側から「透明導電酸化膜(TCO)付ガラス」「正孔輸送層(NiOx)」、厚み400nmの「ペロブスカイト層(FA0.84Cs0.12Rb0.04PbI3)」「電子輸送層(C60)」、「緩衝層」および、「銀電極」を積層した構造となっている。評価用に作製したデバイスの大きさは1cm角である。
今回の研究では、ペロブスカイトのAサイトに、長鎖アルキル基やフェニル基などを有するアミンやジアミン化合物などの「有機アミン類」を導入し、半導体層(ペロブスカイト)と絶縁層(有機アミン類)が交互に重なり合う2次元ペロブスカイトを作製した。2次元ペロブスカイトは疎水性の絶縁層が結晶内部に存在し、外気中で安定に存在できるといわれている。これを3次元ペロブスカイト層と電子輸送層の界面に導入することで、耐久性の向上を目指した。
実験では、1,4フェニレンジアミンの二よう化水素酸塩(PEDAI)を用いた2次元ペロブスカイトと、ピペラジンの二よう化水素酸塩(PZDI)を用いた2次元ペロブスカイトを、ペロブスカイト層と電子輸送層の界面に導入した場合を比較した。この結果、PZDIの2D結晶粒を界面に導入した方が、より高い発電効率と耐久性を示すことが分かった。
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