SiCデバイス製造可能性とコストに関する課題は、Lowe氏も認識している。講演ではそうした懸念を「短期的な混乱」と呼び、SiCブールやSiC基板、SiCウエハー/エピウエハーなどを含めた需給関連の課題について、10年以内には解決されるだろうと楽観的な見方を示した。
Lowe氏は「われわれは6インチウエハーから8インチウエハーに移行することで、SiCで引き続き優れた経済的価値を実現していく。面積を1.7倍に拡大し、コストを約40%削減できる」とした。同氏はコストと製造の課題解決を、巨額の投資とそれを引き出すであろう自動車業界に期待しているようだ。
Balakrishnan氏が唱えたようなSiCへの移行可能性への反対意見が現実的なものかどうか、バランスの取れた見解を示せるのはSiCとGaNの両方の事業を手掛けている企業だろう。GaN分野のパイオニアであるNavitas Semiconductor(以下、Navitas)は、2022年にSiCスタートアップのGeneSiC Semiconductorを買収し、SiCとGaNの両方の開発に取り組んでいる。今回のAPEC 2024では、同社のコーポレートマーケティング担当副社長を務めるStephen Oliver氏が、SiCウエハーコストの進化について説明した。
同氏は、「Creeの6インチSiCウエハーの価格は、2018年には1枚あたり約3000米ドルだった。2024年になると、Wolfspeedの7インチウエハーは約850米ドルになる。さらに2028年には、12〜15インチのSiCウエハーが製造され、価格は400米ドルまで下がる可能性がある」と述べている。
最終的には、Oliver氏のSiCに関する見解はLowe氏の考えに近いものだった。近年の技術の歴史は、規模の経済がいかにコストと製造可能性の問題に対応してきたかを示すものであり、それがSiC陣営のよりどころとなっている。膨大な投資と自動車業界からの支援も役に立つとみられる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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