市場調査会社であるYole Groupによると、SiCパワーデバイスの市場規模は2029年に100億米ドルに達する見込みだという。この市場成長は主にEV(電気自動車)の需要に支えられるものだ。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)は2024年3月、SiC(炭化ケイ素)/GaN(窒化ガリウム)市場についての調査レポートを公開した。それによると、SiCパワーデバイスの市場規模は2029年に100億米ドルに達する見込みだという。SiC市場の急拡大は主にEV(電気自動車)の需要によるもので、同市場は2023年、前年比60%の成長を記録している。
2029年のパワーエレクトロニクス市場では、SiCやGaNといったワイドバンドギャップ(WBG)半導体を用いた製品が全体の35%以上を占める見込みで、中でもSiCは全体の26.8%を占めると予測されている。
SiC/GaNパワーデバイス市場の急成長は、2018〜2019年ごろから始まり、現在も続いている。SiCパワーデバイス市場は当初、Teslaが同社のEV「Model 3」のインバーターにSiCを採用したことで勢いづいたが、現在は800Vの高速EV充電がトレンドだ。
SiCパワーデバイスを採用したEVはBYDの「Han」やHyundaiの「IONIQ 5」などが量産されている。2023年にはSTMicroelectronics、onsemi、Infineon Technologies(以下、Infineon)、Wolfspeed、ロームといった多くの大手デバイスメーカーがSiCパワーデバイスについて記録的な収益を上げている。2025年までにこれらの企業のSiCパワーデバイスの売上高はそれぞれ10億米ドルを超えるとみられていて、今後数年間で設備増強を計画している企業も多い。
自動車だけでなく、産業/エネルギー/鉄道用アプリケーションも成長の勢いを増していることから、YoleはSiCパワーデバイス市場が今後数年でさらに一段階成長すると見ている。
Yoleによると、2023年のSiCウエハー/エピウエハー市場は、大規模な生産能力拡大によって特に中国で力強く成長したが、現在はむしろ生産能力過剰が懸念されているという。SiCパワーデバイスの主要顧客であるTeslaが2024年の成長鈍化を予測していることからも、2024年上期のSiC関連市場は逆風に直面しているといえる。サプライチェーン上の各企業は在庫水準を下げ、2024年下期からの市場の回復を待っている状況だという。
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