名城大学、京都大学らの研究グループは2024年4月5日、白金族5元素を均一に混ぜ合わせたハイエントロピー合金ナノ粒子を触媒に用いて、直径1nm以下の単相カーボンナノチューブを高効率で合成することに成功したと発表した。
名城大学、京都大学らの研究グループは2024年4月5日、白金族5元素(白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム)を均一に混ぜ合わせたハイエントロピー合金(HEA)ナノ粒子を触媒に用いて、直径1nm以下の単相カーボンナノチューブ(SWCNT)を高効率で合成することに成功したと発表した。
代表的なナノ材料であるSWCNTは、高い電子移動度を持ち、金属にも半導体にもなることから、エレクトロニクス分野への応用が期待されている。SWCNTの電気的性質(電子状態)は、その構造、特にカイラリティ(グラフェンシートの巻き方)により変化するため、特定の構造(直径/カイラリティ)を持つSWCNTを選択的に合成する技術の開発が望まれているという。
これまで、さまざまな金属種のナノ粒子を触媒に用いて、化学気相成長(CVD)法によるSWCNTの合成が報告されている。触媒材料として単体の金属を用いた場合、SWCNTの構造制御が難しいため、近年は触媒材料として合成ナノ粒子が注目されている。しかし、一般的な二元系合金を触媒に用いた場合、SWCNTの生成量が少なく、エレクトロニクス応用に適した細径のSWCNTが得られにくいという課題があった。
同研究グループは、SWCNT合成用の触媒材料として、多様な活性サイトを持ち、高温環境でも安定的なHEAに注目した。京都大学の開発した手法を用いて白金族の5元素を原子レベルで均一に混ぜ合わせたHEAナノ粒子を作成し、名城大学の保有するCVD装置を用いてSWCNTの合成を行った。同時に、単体の白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、コバルトを触媒に用いたSWCNT合成も行い、生成量と構造を比較した。
実験の結果、HEAナノ粒子から直径1nm以下のSWCNTが生成され、生成効率は単体の白金族触媒を用いた場合を上回ることが分かった。HEAナノ粒子は強固な結合を有するため高温でも安定していて、単体の金属では実現し得ない活性サイトが表面に存在するため、生成量を大幅に増加させることができたと考えられる。
今後、HEAナノ粒子を触媒に用いることでエレクトロニクス応用に適した細径の半導体型SWCNTを高効率に生成できるようになれば、シリコン半導体を上回る高性能デバイスの実現が期待できるとする。SWCNTは電気抵抗が低く、素子動作中の発熱量を抑えられることから、省エネルギー型電子デバイスの実現も見込める。
同研究グループは「HEAは、さまざまな組成を取ることが可能なため、さらなる生成効率の向上と、構造制御技術の進展が期待できる。今後はHEAを構成する元素を変化させ、生成量の向上およびSWCNTの構造に与える影響について調査するとともに、SWCNT生成において、HEAナノ粒子表面の活性サイトの同定も試みる」とコメントした。
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