多層プリント基板の電源ラインと直列に3端子貫通フィルタを接続する「フィールドスルー接続」では、高周波雑音を除去する効果が期待できる。ただし、多層プリント基板のレイアウトによってはプリント基板のESL成分によってフィルタの効果が弱まることがある。推奨されるのは以下のようなレイアウトである。
多層プリント基板の第1内層(表面層のすぐ下の層)はグランドプレーン(接地平面)層、その下は電源ライン層とする。3端子貫通フィルタは表面層に搭載する。フィルタの入出力端子はスルーホールを介して電源ライン層に、接地端子はビアを介して接地プレーン層に接続する。電源プレーン層の一部は、入力と出力が短絡しないように切除しておく。接地端子とグランドプレーン層の接続では、ビアをなるべく太く短くする。
多層プリント基板の電源ラインと並列に3端子貫通フィルタを接続する「シャントスルー接続」では、電源電圧の突発的な変動を抑える効果が期待される。すなわち負荷電流の急激な上昇によって電源ラインの電圧が低下したときに、3端子貫通フィルタから電源ラインに電流を一時的に供給する。
多層プリント基板のレイアウトと3端子貫通フィルタの搭載レイアウトは、フィールドスルー接続とほとんど変わらない。大きな違いは、入出力端子をつなぐ電源プレーン層を除去しないことだ。電源プレーンをカットしないことで、並列接続となる。シャントスルー接続には、3端子貫通フィルタ内部の寄生抵抗の影響が少ないというメリットもある。
3端子貫通フィルタを電源電圧安定化に利用すると、同じ用途で使われるデカップリングコンデンサの数を減らすことができる。例えば1005Mサイズの積層セラミックコンデンサ(MLCC)4個と同等の機能を、1個の1608Mサイズ3端子貫通フィルタで置き換えられる。実装面積は2.99mm2から1.28mm2へと半分以下に減る。
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