無線電力伝送システムの電気特性をAIで予測:システム設計の時間を大幅に削減
九州大学の研究チームは、AI(人工知能)を活用して、周波数や伝送距離に依存する無線電力伝送システムの電気特性を予測することに成功した。システム設計の時間を大幅に削減できるようになる。
九州大学大学院システム情報科研究院のRamesh Pokharel教授、Adel Barakat助教および、同大システム情報科学府の姜欣博士後期課程(3年生)による研究チームは2024年4月、AI(人工知能)を活用して、周波数や伝送距離に依存する無線電力伝送システムの電気特性を予測することに成功したと発表した。システム設計の時間を大幅に削減することが可能になる。
無線電力伝送システムは、充電用のゲーブルが不要となるため、電気自動車やスマートフォン、医療機器などで導入が進む。関連する発信器/受信器の設計にはAI技術が用いられているが、これまでのAIモデルは伝送効率の予測にとどまっていた。適用可能なサイズや伝送距離も限定されていたという。
そこで今回、異なる伝送距離における発受信器の磁界結合を分析し、4つのカップリングパフォーマンスを解明。新たなAIモデルでは伝送効率だけでなく、動作周波数など複数の電気特性を、より高い精度で予測することができ、システムの設計自動化を可能にした。
左はオーバーカプリングの予測結果。伝送距離が変わった時の伝送効率(中央)と動作周波数(右)の予測結果[クリックで拡大] 出所:九州大学
今回の研究成果により、特定の伝送距離や動作周波数をAIシステムに与えると、最適なレイアウトが生成される。このため、設計プロセスを大幅に効率化できるという。
- ペロブスカイト関連層状酸化物が強誘電性を発現
京都大学は、九州大学や大強度陽子加速器施設(J-PARC)、北海道大学の協力を得て、ペロブスカイト関連層状酸化物「La2SrSc2O7」が強誘電体になることを実証した。しかも、強誘電性の発現には、Aサイトの無秩序な原子配列が重要な役割を果たしていることを突き止めた。
- Li金属負極採用の全固体電池、−25〜120℃で動作
デンソーと九州大学の研究グループは、新しい焼結機構を活用することで、750℃という低温焼結とLi金属への安定性を両立させた「固体電解質」を開発したと発表した。Li金属負極を用いて作製した全固体電池は、−25〜120℃という広い温度範囲で動作することを確認した。
- UVテープを開発、2次元材料を効率よく転写
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と九州大学および日東電工は、グラフェンなどの2次元材料を効率よく簡単に転写できる機能性テープ「UVテープ」を共同で開発した。開発した技術は半導体や絶縁体などの2次元材料にも適用できるという。
- 有機EL材料の発光効率を高める量子機構を発見
名古屋大学と九州大学の研究チームは、有機EL材料の発光効率を高める新たな量子機構を発見した。開発したシミュレーション法を活用すれば、高性能なTADF(熱活性化遅延蛍光)分子を、効率よく開発できるとみられる。
- グラフェンの層間にアルカリ金属を高密度に挿入
産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学、東京工芸大学、九州大学および、台湾国立清華大学の研究グループは、グラフェンの層間にアルカリ金属を高い密度で挿入する技術を開発した。電極材料としてアルカリ金属を2層に挿入したグラフェンを積層して用いれば、アルカリイオン二次電池の大容量化が可能になるという。
- オンアクシススパッタリング法でTmIG薄膜を作製
九州大学とリーズ大学による国際共同研究グループは、大面積の成膜に適したオンアクシススパッタリング法を用い、ツリウム鉄ガーネット(TmIG)の垂直磁化膜を作製することに成功した。高速磁壁移動デバイスやスキルミオンデバイスなどの製造に適用していく。
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