清水氏は、イメージセンサー以外で特に注力している事業の一つとして、半導体レーザーを挙げた。
同社は、HDD大手Seagateとの長年の協業を経て、熱アシスト磁気記録(HAMR)方式のHDD向けの半導体レーザーを「世界に先駆けて量産開始した」と説明。HAMRは従来方式に比べ記録密度を大幅に向上可能とする技術で、データセンター市場におけるストレージとして需要が拡大しているという。
近年、クラウド化や生成AI利用の拡大によって扱うデータ量が爆発的に増える中、大容量の30Tバイト以上の市場が伸びていく見込みだといい、清水氏は、「大容量化にはHAMR方式のHDDが必須だ。中長期的に見てわれわれのレーザービジネスの大きな機会と捉えている」と説明。「2030年には数百億円レベルの利益を確保したい」と期待を見せていた。
OLEDマイクロディスプレイについては、EVF(電子ビューファインダー)などの既存市場からVR(仮想現実)/AR(拡張現実)市場へとシフトが進み、ヘッドマウントディスプレイやARグラスにおける採用が増えていくと見込む。清水氏は、VR/AR市場はまだ黎明期で、今後のアプリケーションの広がりを注視して行く必要があるとしつつ、「ポイントは、ガラス基板のディスプレイデバイスとは異なり、半導体技術を活用したシリコンベースのデバイスであるということだ。われわれが積み重ねてきた半導体技術を生かして差異化できる領域であり、高輝度や高解像といった重要特性において技術優位性を発揮できると考えている」と期待を示していた。
システムソリューション領域では、同社のAI処理機能搭載インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」などを活用したソリューションを効率的に開発、導入できるよう支援するプラットフォーム「AITRIOS」の展開について説明した。
AITRIOSはメインターゲットであるリテールやロジスティクス、ファクトリー市場において、各業界における主要な顧客/パートナーとともに実運用や検証が進んでいるという。清水氏は、「それぞれの現場におけるペインポイントを的確に捉え、AITRIOSならではの提供価値がパートナーや顧客に評価されたからこそ、実用化に結びついたと考えている。この事業のスケール化にはまだまだ時間を要するが、引き続き長期視点で取り組みを着実に進めていく」とした。
また、2023年4月に協業を発表したRaspberry Pi社との協業についても、「IMX500を搭載したAIカメラの発売に向けた準備が進んでいる」と明かした。なお、このAIカメラについてはRaspberry Pi社が2024年4月にドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2024」で公開し、2024年夏頃に発売予定としていた。
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