産業技術総合研究所(産総研)は、横浜国立大学や東北大学、NECと共同で、大規模量子コンピュータに向けた量子ビット制御超伝導回路を提案し、原理実証に成功した。1本のマイクロ波ケーブルで1000個以上の量子ビットを制御することが可能となる。
産業技術総合研究所(産総研)は2024年6月、横浜国立大学や東北大学、NECと共同で、大規模量子コンピュータに向けた量子ビット制御超伝導回路を提案し、原理実証に成功したと発表した。1本のマイクロ波ケーブルで1000個以上の量子ビットを制御することが可能となる。
実用的な量子コンピュータを実現するには、極低温下で動作する量子ビットの状態を制御する必要があり、その数は100万個にも及ぶ。ただ、室温下で生成したマイクロ波信号を異なるケーブルでつなぎ、極低温下の量子ビットまで伝送する必要がある。このため、制御可能な最大量子ビット数はこれまで、1000個程度に限られていた。
今回提案した量子ビット制御超伝導回路は、マイクロ波を多重化し1本のケーブルで多数の量子ビットを制御できる技術である。液体ヘリウム中(絶対温度4.2K)でその原理実証に成功した。この技術を応用すれば、極低温下で制御可能な量子ビット数を飛躍的に増やすことができるという。
提案した回路は、超伝導共振器と超伝導ミキサーで構成され、設置するのは量子ビットと同じ極低温下である。この回路に対し、室温下で生成された多重化マイクロ波とベースバンド信号を入力する。多重化マイクロ波は超伝導共振器により分離され、超伝導ミキサーが入力された各マイクロ波とベースバンド信号から、パルス状のマイクロ波信号を生成する。
これにより、1つのマイクロ波入力(多重化マイクロ波)から、複数の量子ビット制御用マイクロ波信号を出力することが可能となった。しかも、室温と極低温をつなぐケーブルは量子ビット数にかかわらず、原理的には多重化マイクロ波とベースバンド信号を伝送する2本だけで済む。ただ、超伝導共振器の損失もあり、1本のケーブルを用いて制御できる量子ビット数は、最大で数千個とみている。
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