2024年6月4〜7日に、台湾で「COMPUTEX TAIPEI 2024」が開催された。AI(人工知能)用プロセッサの開発では、特にNVIDIAとIntel、両社のCEO(最高経営責任者)が火花を散らしていた。
台湾 台北で2024年6月4〜7日(現地時間)、「COMPUTEX TAIPEI 2024」が開催された。筆者はその初日に、IntelのCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏のオープニング基調講演に参加する機会を持つことができた。そしてその後、NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏のメディア向けQ&Aセッションにも参加した。
Gelsinger氏とHuang氏の講演を聴いて、両者ともプレゼンが非常にうまく、特にHuang氏は聴衆を強く引き付ける名人だということが分かった。Gelsinger氏は冒頭で、「私は、台湾が技術エコシステムの中で中心的役割を担っていることを大変うれしく思う」と述べた。台湾のコンピューティング業界のCEOが全員最前列に座っていて、その全てが顧客企業であるという事実を意識してのことである。
一方Huang氏は、バリューチェーン全体における台湾の重要性について触れ、「台湾のエコシステムは、実に素晴らしい。TSMCによる半導体製造からパッケージング、テスト、組み立て、ロジスティクスに至るまで、台湾には全てがそろっていて非常に大きな力を発揮している。まだ正しく評価されていない隠れた英雄たちが存在する、非常に素晴らしい国だ」と述べている。
また、両氏は互いに称賛し合うだけでなく、ライバル意識を持っていることも分かった。Gelsinger氏は、Intelの「Xeon 6」プロセッサを発表した際に、「Jensen氏が皆を信じさせようとしているのとは反対に、ムーアの法則はまだ健在だ。Intelは、オープンスタンダードやセキュリティ、サステナビリティなどを提案の中心に置くことで、AIを広く普及させている。『Intel 3』世代のプロセス技術を適用した最初のプロセッサとなるXeon 6は、非常に優れたワット当たり性能を実現する」と述べている。
Gelsinger氏は、「今日ではどのデータセンターも、そのアップグレード能力によって押しつぶされそうになっていることから、これは重要な鍵になるだろう」と主張する。また同氏は、ネットワークファブリックとエッジAIの重要性についても語り、ファブリックに関しては、オープンスタンダードのネットワークインフラの他、高速イーサネット規格の策定を推進する団体『Ultra Ethernet Consortium(UEC)』や、2024年5月に発表された『Ultra Accelerator Link(UALink)』などの必要性を強調した。また、「2026年までには、エッジ(エンドポイント端末)全体の50%以上がAIワークロードを実行するようになるだろう」と付け加えた。
またIntelは、次世代プロセッサ「Lunar Lake」(開発コード名)を発表している。Gelsinger氏は、「Lunar Lakeは、次世代AI PC向けのフラグシッププロセッサだ。20社を超える機器メーカーとの間で既に80種類の設計が完了しており、2024年第3四半期に出荷開始予定である。簡単に使用できるため、誰もがアップグレードすべきだ」と述べる。
Jensen Huang氏は、メディア向けQ&Aセッションにおいて、オープンなネットワークファブリックとプロプライエタリ(独占的)なネットワークファブリックの問題について取り上げた。「われわれがNVLinkを構築して7年がたち、人々はその重要性に気づいた」と同氏は述べる。UALinkイニシアチブに対する当てつけとも取れる発言だが、「Intelが今始めたばかりであれば、その成果を示すものが出来上がるのは数年後になるだろう」とHuang氏は付け加えた。「そのころには、われわれは既に第7世代か第8世代に突入しているだろう」(同氏)
Huang氏はまた、あらゆるアプリケーションに対するアクセラレートコンピューティングの必要性を強調した。「文字通り、全てを加速させる。今日では、汎用コンピューティングを使用するのはまるで意味がない。その上、アクセラレーションコンピューティングなら消費電力を90%削減できる」と付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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