熊本大学と名古屋大学、クイーンズランド大学の研究グループは、ナノサイズの孔(ポーラス)構造を有するナノポーラスBa0.85Ca0.15(Ti0.9Zr0.1)O3(BCZT)薄膜の合成に成功し、巨大な圧電応答の発現を観測した。
熊本大学大学院先端科学研究部の寺澤有果菜助教と名古屋大学大学院工学研究科の山内悠輔卓越教授、クイーンズランド大学のMd. Shahriar A. Hossain准教授らによる研究グループは2024年6月、ナノサイズの孔(ポーラス)構造を有するナノポーラスBa0.85Ca0.15(Ti0.9Zr0.1)O3(BCZT)薄膜の合成に成功し、巨大な圧電応答の発現を観測したと発表した。
圧電体材料としてこれまでは、大きな圧電性を示すチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が一般的に用いられてきた。ただ、環境保護や安全性の点から、近年は非鉛系圧電体の開発が求められている。こうした中で注目されているのが、BaTiO3である。積層セラミックコンデンサーへの応用に加え、高誘電率や低誘電損失といった特長が評価されている。ただ、圧電性で鉛系材料にはこれまで及ばなかった。
研究グループは今回、合成したナノポーラスBCZT薄膜の圧電特性などを評価した。この結果、ナノポーラスBCZT薄膜では圧電ひずみ定数(d33)が、約7500pmV-1となり、バルク(ノンポーラス)BCZT薄膜に比べ10倍以上となった。PZTセラミックスと比較しても、1桁以上の大きな値となった。
格子ひずみの定量解析も行い、ナノポーラスBCZT薄膜では30%のひずみが生じていることを確認した。ナノポーラス構造を採用したことで結晶格子に大きなひずみが生じ、d33が大きな値になったと分析している。ちなみに、バルクBCZT薄膜では約0.3%のひずみを観測した。
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