TDKが、ライン間容量を従来比約30%低減した車載Ethernet規格10BASE-T1S用コモンモードフィルター「ACT1210E-131」を開発した。
TDKは2024年7月9日、ライン間容量を従来品比約30%低減した車載Ethernet規格10BASE-T1S用コモンモードフィルター「ACT1210E-131」を新たに開発したと発表した。
OPEN Allianceが定める、10BASE-T1S向けコモンモードフィルターの要求特性において最もライン間容量が低いクラス4を「業界で初めて」(同社調べ、2024年7月時点)達成していて、信号波形の乱れ改善や、接続ECU数の増加を可能にするとしている。ACT1210E-131のサンプル価格は1個165円(税別)。2024年7月から量産を開始していて、月産5万個(当初)を予定している。
自動車のE/E(電気・電子)アーキテクチャが従来の分散型からドメイン型、さらにゾーン型へと移行しつある中、車載ネットワークの通信規格をEthernet系に統一する動きが進んでいる。
ただ、10BASE-T1Sの通信回路には、コモンモードフィルター以外の電子部品としてPHY、ESD対策部品などがあり、それぞれが持つコンデンサーのような「容量」の合計が大きいほど信号波形が乱れ正常な通信を阻害するため、設計者は低容量を意識した部品選定することが不可欠となっている(10BASE-T1S導入の動きや課題などの詳細は下記リンクも参照)
TDKはこうした課題を解決する製品として、2023年2月に10BASE-T1Sに「業界で初めて」(同社)対応したコモンモードフィルター「ACT1210Eシリーズ」を発表。同シリーズ初の製品である、ACT1210E-241を展開している。ACT1210E-131は同シリーズの新製品で、独自の巻き線構造や材料最適化などによって、ACT1210E-241と比べ約30%低減となるライン間容量7pF(最大値)を実現。OPEN Allianceが定める、10BASE-T1S向けコモンモードフィルターの要求特性である「EMC test specification」(1〜4のクラス分け判定)で最高となるクラス4を「業界で初めて」(同社)達成した。TDKは、ACT1210E-241からさらなる低容量化を実現したことで、信号波形の乱れを改善できる他、搭載ECU数を増やせるというメリットを実現できるとしている。
さらに、その他の要求特性についても、パス/フェイル判定の「Return loss」「Insertion loss」は両方ともパスしている他、1〜3のクラス分け判定の「Common mode rejection」「Differential to common mode rejection」については、それぞれクラス1、クラス3を達成している。同社説明担当者は、「ライン間容量の低減との両立が難関だったが、巻き線の構造および材料の最適化によってうまくバランスをとった」と語っていた。
なお、既存品であるACT1210E-241についてはライン間容量の特性がクラス3(10pF[最大値])な一方、コモンモードノイズ抑制性能の指標であるCommon mode rejectionについては最高となるクラス3と、ACT1210E-131より高い。説明担当者は「ACT1210E-241はノイズ抑制性能特化、ACT1210E-131は低容量特化という位置付けだ」と説明。「設計者はまず低容量のACT1210E-131で検討し、ノイズがどうしても取り切れないというところに対しては従来品のACT1210E-241を、という設計の仕方がスムーズだろう」としている。
ACT1210E-131のサイズは3.2×2.5×2.5mm。動作温度範囲は−40℃〜+125℃。自動車向け受動部品の信頼性規格AEC-Q200に準拠し、金属端子と巻線ワイヤをレーザー溶接した構造によって、高い熱衝撃耐性を備えるのも特長だ。
ACT1210E-131のインダクタンスは(100kHz、100mVにおいて)130μH(誤差:−25%〜+50%)、直流抵抗は最大2.9Ω、絶縁抵抗は最小10MΩ。定格電流は最大70mA、定格電圧は最大80Vだ。
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