名古屋大学は、酸化物や酸化グラフェン、窒化ホウ素といった2次元物質(ナノシート)を高速かつ大面積に成膜する方法(自発集積転写法)を開発した。操作は簡便で水面へのインク滴下と基板転写のみで成膜が完了する。専門的な知識や技術は必要なく、わずか1分程度で、ウエハーサイズやA4サイズのナノシート膜が作製できる。
名古屋大学未来材料・システム研究所の長田実教授らの研究グループは2024年7月、酸化物や酸化グラフェン、窒化ホウ素といった2次元物質(ナノシート)を高速かつ大面積に成膜する方法(自発集積転写法)を開発したと発表した。操作は簡便で水面へのインク滴下と基板転写のみで成膜が完了する。専門的な知識や技術は必要なく、わずか1分程度で、ウエハーサイズやA4サイズのナノシート膜が作製できる。
ナノシートは、高い電子・イオン移動度、高誘電性、透明性、高熱耐性といった機能を有し、エレクトロニクスやエネルギー分野での応用が期待されている。ただ、高品質で大面積のナノシート薄膜を作製する技術は、まだ確立されていないという。
研究グループはこれまで、酸化物や酸化グラフェン、窒化ホウ素といったナノシートインクを用いた成膜技術の研究を行ってきた。この中で、純水の入ったビーカーにナノシートインクを数滴滴下すれば、水面で流氷が並ぶように、ナノシートが自発的に並び、約15秒という短時間でナノシート緻密膜が形成される現象を発見した。
自発集積現象と呼ぶこの現象を用いて形成したナノシート緻密膜を、金魚すくいや紙すきの要領で基板に転写すれば、大面積のナノシート膜を短時間で作製できる。なお、インクにナノシートのコロイド水溶液(濃度0.36wt.%)とエタノールが1対1の混合溶液を用いれば、効率的なナノシートの配列制御を実現できるという。
水面へのインク滴下と基板転写の操作に要する時間は約1分と短く、膜厚1〜2nmのナノシート単層膜を形成できる。この作業を繰り返し行えば、透明導電膜や誘電体膜などとして機能する多層膜を作製することも可能。短時間で成膜が完了するため、100層や200層といった多層厚膜も作製できるという。多層膜をNaCl水溶液に浸して基板から剥がせは、ナノシート自立膜を作製することができる。
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