レゾナックは、樹脂コーティングレゴリスの構造と熱特性改善効果を検証するため、月面環境を想定したFEM(有限要素法)熱シミュレーションを行った。
シミュレーションでは、レゴリス模擬材として山口県豊浦産の天然珪砂「豊浦標準砂」を使用。また、コーティング手法には、レゴリスの表面にPAIなどの樹脂層をコーティングした後に締め固めるRCSを用いた。樹脂には同社のPAI製品「PAI-1000」や「PAI-5000」、RCSを用いたフェノール樹脂を使用した。混練条件は80℃/120秒、成形条件は270℃/60分だ。
豊浦標準砂を使用した理由について、清水氏は「砂形がそろっているため、サンプルとして使いやすい。また、レゴリスを研究した過去の論文でも使用していたため採用した」と説明した。今後は、JAXAからレゴリスのサンプル提供を受ける予定だという。
シミュレーションの結果、レゴリスにコーティングする樹脂の厚みを増やしていく程、熱伝導率が上がっていくことが分かった。樹脂コーティング膜厚が1μmの場合、コーティングをしていないものと比較して、熱伝導率は約1000倍、月面で取り出せる総熱量は20倍に増加する見込みだ。同社によると、「今回の結果は、計算情報科学研究センターで培った高いシミュレーション技術により、蓄熱効果の検証も短期間で実現したもので、JAXAにも評価されている」という。
清水氏は、今回のシミュレーションの結果について「地球上の素材である豊浦標準砂を使ったシミュレーションの結果であり、あくまでも参考値だ。しかし、米国のアポロ計画の際に書かれた論文などの過去のデータと比較してもオーダー(数字の桁)が合っているため、樹脂でコーティングすることで熱伝導率を向上させられることはある程度間違いないと思われる」と述べ、「今回のプロジェクトの目的は、月にある材料を使って、いかに質の高い蓄熱材を製造するかだ。コーティングの膜厚を上げる程に熱伝導率は向上するが、代わりに地球から持っていかなければいけない材料が増える。樹脂の使用量と熱伝導率のバランスについては今後も検討を進める」と語った。
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