MIPCコアの主な特徴には、ハードウェアマルチスレッディング機能や密接合メモリの他、ヘテロジニアスコンピュートやコヒーレントなシステムインターコネクトを実現する機能などが挙げられる。これらが一体となって、Wasson氏が「MIPSiness」と呼ぶ品質を実現しているのだ。
同氏は、「これは基本的に、MIPSの遺産である“MIPSiness(MIPSらしさ)”を進展させたものだ」と述べる。
MIPSデータ移動ソリューションは通常、複数コアのクラスタであり、MIPSコヒーレンスマネジャーとともに、全て同じ種類のコアである(MIPSは、アウトオブオーダー実行のPコアと、インオーダー実行のIコアを搭載)
密結合メモリは、カスタムアクセラレーターやベクトルエンジン、DPSなどの低レイテンシを実現しながら、ハードウェアマルチスレッディングやハードウェア仮想化のような機能で柔軟性を高めることが可能だ。
これらの機能は全て、カスタム命令によって実現される。MIPSは、顧客が独自の命令を追加できるよう、継続的にツールへの投資を行っている。この機能はかつて、MIPS ISAで広く使われていたものだ。
Wasson氏は、「当社の研究開発全体の15〜20%をツーリングが占めているが、われわれはツールメーカーではなくコンピュータ/IPメーカーだ。顧客がカスタム命令を記述できるようツールを提供しているが、性能の提供に関してはわれわれがオーナーシップを確保している」と述べる。
またWasson氏は、「MIPSの顧客エンゲージメントモデルは、IPの重要な部分である」と付け加えた。
「そこにはバリューチェーンがある。われわれはコンピュートIP企業として、どのような価値を提供するのかを明確にしなければならない。顧客を追い抜くことで価値をもたらすのではない。顧客を後押しする力として存在し、その位置付けを確実に維持していきたいと考えている」(Wasson氏)
MIPSは2018年に、MIPS ISAからRISC-Vに移行した。Wasson氏は、「RISC-Vへの移行方法は2つある。ISA上にトランスレーターを構築する方法(6カ月間を要する)と、完全に移行する方法(約6年間を要する)だ。MIPSは、後者を選択した」と述べる。
「RISC-Vへの移行は、絶対的に正しい決断だった。レガシーな理由のために独自アーキテクチャが存在していたが、これはハードウェアエンジニアが半導体業界を動かしているからだ。しかし、当社の顧客企業はソフトウェアエンジニアである。われわれはただ単純明白に、顧客ベースで対応したいと考えている」と述べる(Wasson氏)
同氏は、「RISC-Vは、標準化のメリットをもたらしながら、MIPSのMIPSinessを維持できるよう十分に差別化された実装を実現できる」と主張する。
「多くの人々は、『RISC-VはArmキラーになる可能性がある』と認識している。このようなストーリーは、メディアや投資家層にはうまく対応できるが、潜在的な可能性を制限してしまっているのではないだろうか。システムの観点からRISC-Vに何ができるのかを考えれば、RISC-Vの可能性はもっと大きく広がっているはずだ」(Wasson氏)
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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