同氏は、「これまでは、処理を行うためにコントローラー(制御)側にデータを渡していた。ではコントローラーをデータ側に持っていくとどうなるだろうか? それは、いわゆるニアメモリコンピューティングで、TAM(獲得可能な最大市場規模)は巨大だ」と述べている。
そのビジョンは、小型コンピュートコアをメモリに組み込むことであり、その逆ではない。CXL(Compute Express Link)対応のメモリプーリングが実現しつつあることから、トラフィックシェーピングや優先順位付けなどの一部の事前処理を実行するチャンスが広がっている。
Wasson氏は、「システムレベルでパイプラインを考えてみよう。最初に必要なデータは何か。そして次に必要なデータは何なのか。トランザクションをわずか数マイクロ秒だけでも短縮できれば、トランザクションの全体数でみれば、CPUの数の削減につながる。従って、電力消費量も減る」と説明する。
同氏は、「データセンター顧客は現在、メモリを、資本的支出(CAPEX)と事業運営費(OPEX)の両方の問題だと考えている。特に、OPEXが悪化するのは、メモリプールがアイドル状態で計算を待っている場合であり、その逆も同様だ」と述べている。
「x86コアをそこに入れられなかったのは、それでもまだ大型のコアになるからだ。データ指向のリアルタイム処理タスクといった、少量の処理タスクについて考えてほしい。これこそが、今から登場しようとしているものだ」(Wasson氏)
また同氏は、「ストレージも同様に、AIデータ移動を効率化するための大きなチャンスとなっている」と述べる。
GPUとAIアクセラレーターは、新たなチャンスだといえる。GPUの処理は、スカラーとベクトル、行列乗算に分けられる。行列乗算のアクセラレーションは大きな注目を集めているが、スカラーについてはどうだろうか。
Wasson氏は、「スカラーは多くの点で、最も“退屈な分野”だといえる。しかし、それを手掛けている企業が3社しか存在しないため、いろいろな意味で最も難しい分野でもある。カスタムアクセラレーターの新しい市場に対応しながら、一方でプログラミングモデルを標準化できれば、最も大きな問題にも対応できるようになる。その問題とは、ハードウェアではなくソフトウェアだ」と述べる。
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