Lam Researchは、1000層を超える3D(3次元) NANDフラッシュメモリの加工に向け、極低温絶縁膜エッチング技術の最新世代「Cryo 3.0」を発表した。100:1という高いアスペクト比のメモリホールを、極めて垂直に高速で加工できるという。
Lam Research(以下、Lam)は2024年7月、第3世代となる極低温絶縁膜エッチング技術「Lam Cryo(クライオ) 3.0」を発表した。これに伴い、日本法人のラムリサーチは同年8月22日、記者説明会を開催し、同技術の詳細を説明した。Lamのエッチングチャンバー「Vantex」に適用することで、3D(3次元) NAND型フラッシュメモリのメモリホールを高速かつ高精度に加工できるようになる。1000層を超える3D NANDフラッシュの開発が進む中、その実現を支える重要な技術になると、ラムリサーチ Regional Technology Group Managing Directorの西澤孝則氏は強調する。
AI(人工知能)の普及などで最先端メモリ/ストレージの需要が増大していることから、NANDフラッシュでは高密度化によるビットコスト(ビット当たりのコスト)の低減が、以前にも増して求められるようになっている。そのため、特に積層化の競争は激しく、「NANDフラッシュメーカー各社は、1000層の3D NANDフラッシュの開発を視野に入れている」(西澤氏)
現在、NANDフラッシュでは200層や300層を超える積層数の製品が発表されている。このように積層数が多いNANDフラッシュの製造では、メモリホール(メモリチャネル)をいかに高精度かつ高速に加工できるかが重要になる。「200層を超えるNANDフラッシュでは、メモリホールのアスペクト比は50:1を超える。しかも、1枚の300mmウエハーに1兆個以上のメモリホールを、ほぼ完璧に開けなくてはならない」(西澤氏)
これだけアスペクト比が高い穴を加工するのは難易度が高い。まず、そもそも「垂直に」加工することが難しい。途中でゆがんだり、下層に行くにつれて細くなってしまったりするからだ。メモリホールの垂直性が不十分だとデバイス性能に悪影響を与える。垂直に加工できず、メモリホールの穴径(CD:Critical Dimension))が上層と下層で違い過ぎると、多値メモリのしきい値判別などに支障が出てしまう。「メモリセルの積層数を増やすためには、メモリホールを上から下まで垂直に加工できる技術が必要になる」(西澤氏)
Lamは、高アスペクト比(HAR:High Aspect Ratio)のメモリホールを高精度に加工するHAR絶縁体エッチングチャンバーや技術を提供してきた。Cryoは、極低温でエッチングすることで、垂直性が高く、かつ真円度が高い(上から見ると真円に近い)メモリホールを加工できる技術だ。2019年に第1世代をリリースし、量産に適用した。現在、LamのHAR絶縁体エッチングチャンバーは7500台以上がNANDフラッシュの製造に使われていて、そのうち約1000台にCryoが適用されているという。西澤氏は「当社の極低温エッチング技術は、安定した性能を量産において実現できていることが最大の強みだ」と強調する。
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