大阪大学はダイセルとの共同研究で、銀(Ag)とシリコン(Si)の共晶合金を液体急冷すると、非晶質SiやAg過飽和固溶体の準安定相が出現することを発見した。また、液体急冷Ag−Si合金を大気中で加熱すると、Ag過飽和固溶体に含まれるSiが酸化反応を起こし、副産物としてAgが析出されることも明らかにした。
大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D実装協働研究所の中山幸仁特任准教授らは2024年9月、ダイセル無機複合実装研究所との共同研究で、銀(Ag)とシリコン(Si)の共晶合金を液体急冷すると、非晶質SiやAg過飽和固溶体の準安定相が出現することを発見したと発表した。また、液体急冷Ag−Si合金を大気中で加熱すると、Ag過飽和固溶体に含まれるSiが酸化反応を起こし、副産物としてAgが析出されることも明らかにした。
Ag-Si合金を急冷すると、Ag3SiやAg2Siなど化合物の準安定相が存在することは知られていた。そこで今回は、液体急冷法を用いAg−Si合金を急速冷却した。この結果、Ag相とSi相がナノスケールサイズで相分離していることを明らかにした。また、Ag相にはSiが約5%固溶したAg過飽和固溶体が形成され、非晶質でSiが凝固していることを確認した。
さらに、液体急冷Ag−Si合金粉末を加熱した。窒素99.9%、酸素0.1%の混合ガスをフローさせながら280℃で3時間エージングを行うと、250℃付近からAg析出現象が起こり、粉体表面にAgが析出された。
SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体デバイス向け接合材料として、Agが注目されている。研究グループはこれまで、低温で析出したAgをパワー半導体の接合材料に応用することを検討してきた。
今回の実験では、表面にAgが析出した液体急冷Ag−Si合金リボンをシート形状に加工し、Cu(銅)チップとAg蒸着コート済のCu基板で挟んだ。その後、大気中で20MPaの圧縮応力を加えながら、300℃で1時間の加熱を行い、焼結接合させることに成功した。接合材料として利用できる十分な強度を有していることを実証した。
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