大阪大学は、岡山大学や神戸大学、名古屋大学と共同で、新たに開発した分子設計手法を用い、有機半導体の励起子束縛エネルギーを低減することに成功した。有機太陽電池のエネルギー変換効率を向上させ、単成分型有機太陽電池として機能することも確認した。
大阪大学は2024年9月、岡山大学や神戸大学、名古屋大学と共同で、新たに開発した分子設計手法を用い、有機半導体の励起子束縛エネルギーを低減することに成功したと発表した。有機太陽電池のエネルギー変換効率を向上させ、単成分型有機太陽電池として機能することも確認した。
有機半導体は、軽量で柔軟性があり印刷プロセスによる大面積デバイスの製造が可能になるなど、さまざまな特長がある。研究グループは、有機半導体を発電層に用いた有機太陽電池の開発に取り組んできた。ただ、シリコンなどの無機半導体に比べると比誘電率が小さい。このため、光エネルギーを取り込んでも、負電荷と正電荷が励起子束縛エネルギーで束縛され、自由電荷に変換されにくかったという。
研究グループはこれまで、有機半導体の比誘電率を増やすための分子設計を行えば、励起子束縛エネルギーを低減できることを明らかにしてきた。また、励起状態で正電荷と負電荷の距離が大きくなれば、励起子束縛エネルギーを低減できる可能性があることも分かっていた。
これを踏まえ、分子内でHOMO(最高被占軌道)とLUMO(最低空軌道)の空間的配置を分離させる設計を行った。そして今回、従来材料(ITIC)に比べ、励起子束縛エネルギーが小さい有機半導体分子(SpiroT-DCI)を開発した。
アクセプター材料に新開発の有機半導体分子を、ドナー材料にPBDB-Tを、それぞれ用いた「バルクヘテロジャンクション型有機太陽電池」を作製した。この有機太陽電池は、従来材料や比較材料(SpiroF-DCI)を用いた場合に比べ、優れた特性を示した。また、SpiroT-DCIの第一成分膜を発電層に用いた太陽電池は、最大3.6%の量子効率となり、単成分型有機太陽電池として機能することを確認した。
今回の研究成果は、大阪大学産業科学研究所の陣内青萌助教や家裕隆教授と、岡山大学環境生命自然科学学域の山方啓教授、神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの小堀康博教授および、名古屋大学情報学研究科の東雅大教授らによるものである。
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