欧州半導体法の下、既にいくつかの新しいパイロットラインの計画が進行している。発表された最新のパイロットラインは、フランスのグルノーブルに設立される予定だ。フランスの研究機関であるCEA-Letiが主導するFAMESパイロットラインは、完全空乏型シリコンオンインシュレータ(FD-SOI)、組み込み不揮発性メモリ、無線周波数コンポーネント、3D(3次元)統合オプション、電源管理IC用小型インダクターなどの技術開発を目指すという。FD-SOIは、デジタル、アナログ、RFサブシステムを組み合わせたプレーナ型CMOS技術である。その潜在的な機能から、次世代ノード(10nmおよび7nm)への次のステップとなる。FAMESプロジェクトの資金は総額8億3000万ユーロで、参加加盟国とEUの半導体共同事業(Chips Joint Undertaking)から提供される。
米国の大手半導体メーカーであるonsemiは2024年6月、チェコ共和国に最先端の垂直統合型SiC製造施設を設立する意向を表明した。複数年にわたって最大20億米ドルを投資するという。これは、Si(シリコン)結晶成長、SiおよびSiC(炭化ケイ素)ウエハー製造(ポリッシュドおよびエピタキシャル)、Siウエハー工場などの同社の現地事業を基盤として、ブラウンフィールド型の投資で行われる。同施設では現在、10億個以上のパワーデバイスを含む、年間300万枚以上のウエハーを生産可能である。onsemiによると、拡張された製造施設がフル稼働すれば、チェコ共和国のGDPに毎年2億7000万米ドル以上貢献することになるという。
EC(欧州委員会)は2024年5月、イタリアのカターニアにおけるSTのワイドバンドギャップ(WBG)半導体研究開発施設の建設を承認した。この垂直統合型製造ラインでは、現地で確立されたSiCとGaN(窒化ガリウム)の技術を活用し、200mm SiC技術を使用したパワーデバイスおよびモジュールの生産を目指すという。今回の第2期投資では、200mmウエハーの生産能力と、EVのトラクションインバーター構築の鍵となるパワーモジュールの新ラインを追加し、カターニアにおけるSTのプレゼンスを拡大する。同施設は、ベアとパッケージの両方のSiCデバイスを量産し、原料粉末からインゴット、基板、ウエハー処理、テスト、さらに最終的にはパワーモジュールのパッケージングまで、完全なエコシステムをサポートする。2026年に生産を開始する予定で、2033年には週あたり1万5000枚のウエハー生産能力を見込んでいる。同施設への投資総額は50億ユーロで、そのうち20億ユーロは欧州半導体法に基づきイタリア政府から提供される。
これらのプロジェクトは、フィンランドのタンペレ大学が2024年4月に発表したWBGシステムインパッケージ製造(SiPFAB)のパイロットラインに続くものだ。このSiPFABパイロットラインは、予算4000万ユーロで、チップのテストとパッケージングのための環境を提供する。
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