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SiCを低コスト化できるか 米装置メーカーのCMP技術Axus Technologyが開発(1/2 ページ)

米Axus Technologyが提供するCMP(化学機械研磨)装置は、SiCウエハーのコストを大幅に下げる可能性がある。

» 2024年10月01日 09時30分 公開

 SiC(炭化ケイ素)パワー半導体の生産が急速に増加したことで、SiCの課題に対処し利点を活用するためのプロセス技術の進歩が大きく加速している。SiC材料は、結晶品質の向上や欠陥の低減、歩留まりの向上など、改善が進んでいる。

 CMP(化学機械研磨)では、応力の低減などの進歩が極めて重要である。応力は、ウエハーの形状、特に反りやひずみに影響を与えるため、ウエハーの取り扱いや処理に大きな課題をもたらす可能性があるからだ。こうした技術の進歩は、SiC生産の経済性に大きな影響を与える。歩留まりは、半導体関連のビジネスにおいて極めて重要だが、SiCの場合は特に当てはまる。

 米国のCMP装置プロバイダーであるAxus Technology(以下、Axus)は2024年7月、同社のCMP処理ツール「Capstone CS200」シリーズの売り上げが急増したと発表したが、これは150mmと200mmの両方のSiCウエハーの量産に対する関心の高まりを表している。CS200シリーズは、2種類のウエハーサイズを同時に処理できるため、業界最高レベルのスループットと歩留まりを実現できるという。

Axus Technologyの「Capstone CS200-ia」の外観 Axus Technologyの「Capstone CS200-ia」の外観[クリックで拡大] 出所:Axus Technology

 SiC技術とCMPプロセスの改善は、ウエハーの品質と歩留まりの向上に直結する。さらに、TCO(総所有コスト)と生産性が向上すれば、製造コストを削減できる。これらの要因が相まって市場での採用が促進され、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、高出力エレクトロニクスなどの主要なSiCアプリケーションに大きな影響を与える。

依然として高価格なSiCウエハー

 SiCウエハーは、“第3世代の半導体材料”として、高温、高周波、高出力アプリケーションにおいて性能が高く評価されている。SiCウエハーの需要は、EVや太陽光発電、高周波エレクトロニクスデバイスで特に高まっているが、その価格は依然として高く、変動が激しい。これには、複数の要因がある。

 まず、高純度のカーボンおよびシリコン原材料のコストは、ウエハーの製造コストに直接影響する。PVT(物理気相成長)やCVD(化学気相成長)などの複雑な製造プロセスも、技術的な難しさや設備要件から、高コストの一因となっている。ウエハーサイズが150mmや200mmのように大きくなると、製造が難しくなり、コストがさらに増加する。

 欠陥密度が低く電気伝導率が高い高品質のSiCウエハーには、高度な技術が求められるため、製造コストが高くなる。市場の需要と供給の動向は価格に大きく影響し、不足すると当然ながら価格は上昇する。時間はかかるが、技術が進歩し生産規模が拡大すれば、コストを削減できる。政府の政策や補助金も、企業の生産コストの削減につながるため、価格に影響を与える役割を果たす。最後に、原材料の供給や物流などのサプライチェーン要因が、最終的なウエハー価格に影響を与える可能性がある。

 こうした要素を理解することは、企業が情報に基づいた生産や市場計画の決定を実行する上で、非常に重要だ。

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