会合では、経済産業省 デバイス・半導体戦略室長の清水英路氏が、「半導体・デジタル戦略」の概要をあらためて紹介した。経産省は2021年3月以降、定期的に「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を開催。2021年6月に「半導体・デジタル産業戦略」を公表して以来、半年に一度のペースで更新してきた。
清水氏は「半導体はセキュリティ、脱炭素のキーパーツで、今や国際戦略物資となっているが、日本は長期不況によって人材や設備に思い切った投資ができなかった。あらゆる競争力につながる半導体技術が、米国や韓国、台湾の後塵を拝していることに対して大きな危機感を持っている。政府として半導体産業を全力でサポートし続けていく」と述べた。
半導体・デジタル産業戦略の基本戦略は、ステップ1〜3の3段階で構成されている。半導体の製造基盤を確保する「ステップ1」、次世代の先端半導体を設計/製造する技術の確立を目指す「ステップ2」、光電融合や量子コンピューティングなど将来技術の研究開発に投資する「ステップ3」だ。TSMC工場への熊本への誘致はステップ1、Rapidusへの支援はステップ2の代表的な施策となる。
これらを、「ポスト5G基金」など4つの基金(制度)で支援する。「これからも新しい制度を作っていく。その一つとして『戦略分野国内投資促進税制』を整備している。これはパワー半導体、アナログ、センサーを手掛ける企業が既存工場を拡充する際、法人税の減税を10年にわたり行うもの。既存のリソースを生かして競争力を高めることが目的だ」(清水氏)
清水氏はさらに、半導体工場の誘致は地域経済に大きな波及効果をもたらすと述べた。TSMCであれば、熊本県内だけで、2022年からの10年間で約11兆円の経済効果があるとの試算を紹介。一方で、半導体工場は大量の水と電力を使用する上に、物資の運搬などで道路渋滞も招くなど、マイナスの側面もあると述べ、地域のインフラ整備に向けた支援を行えるよう、国の予算を確保しているとした。
清水氏は、ステップ2における最近の取り組みも紹介した。LSTC(技術研究組合最先端半導体技術センター)がカナダTenstorrentと連携して行う2nm世代プロセスベースのエッジAIアクセラレーターの開発や、自動車用先端SoC技術研究会(Advanced SoC Research for Automotive/ASRA)が開発を目指す自動運転向け先端半導体の開発などを取り上げた。「日本企業が先端半導体の設計力をつけていくことが重要だ」(同氏)
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