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波長を変換しながら3000kmの長距離伝送、NTTとNECIOWNサービスの提供エリア拡大へ

NTTとNECは、波長を変換しながら長距離光伝送を可能にする技術を確立した。開発した技術を活用すれば、「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の適用エリアを拡大できるという。

» 2024年11月14日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

4回の波長変換で3000km以上の伝送性能を確保

 NTTとNECは2024年11月、波長を変換しながら長距離光伝送を可能にする技術を確立したと発表した。開発した技術を活用すれば、「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の適用エリアを拡大できるという。

 IOWN構想では、APNを用い大容量で低遅延のエンドツーエンド光パスを、少ない電力消費で広範囲に提供していくことを目指している。これによって、工場DXやインタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術などが可能となる。これを実現するには、割り当てられた波長が異なる光パスをつないでいく必要があるという。

 これまでNTTは、APNを構成する光ノードシステム「Photonic Exchange」を研究してきた。長距離のエンドツーエンド光パスを効率的に提供するには、波長アダプター機能と伝送性能の確保を両立させる必要があるという。Photonic Exchangeは、クロスコネクト機能やネットワークに光パスを出し入れする機能に加え、波長アダプター機能も備えている。

 一方、NECは「光−電気アナログ−光(OAO)型波長変換技術」を開発してきた。OAO型波長変換器は、光信号を電気デジタル信号に変えることなく波長を変換できる。このため、デジタル信号処理で生じていた「遅延」や「揺らぎ」をなくすことができるという。

Photonic Exchangeの波長アダプター機能による、エリアごとの未使用な波長を使用したエンドツーエンド光パス提供の概要図 Photonic Exchangeの波長アダプター機能による、エリアごとの未使用な波長を使用したエンドツーエンド光パス提供の概要図[クリックで拡大] 出所:NTT、NEC
波長アダプター機能を実現するための要素技術 波長アダプター機能を実現するための要素技術[クリックで拡大] 出所:NTT、NEC

 そこで今回、Photonic ExchangeにOAO型波長変換技術を活用し、波長アダプター機能の実験実証を行った。具体的には、OAO型波長変換器のプロトタイプを用い、1周回当たり2個のOAO型波長変換器を含む周回伝送実験系を構築し、複数回の波長変換を行いながら100Gbps/λの光信号品質を測定した。

 この結果、4回の波長変換を行っても3000km以上の伝送性能を確保できることが分かった。これは本州を縦断できる距離に相当するという。しかも、これまでの波長変換方式に比べ、波長変換で生じる消費電力を約90%削減し、遅延量は約99%も削減できることを確認した。

波長アダプター機能を適用したエンドツーエンド光パスの伝送性能を評価するための実験系 波長アダプター機能を適用したエンドツーエンド光パスの伝送性能を評価するための実験系[クリックで拡大] 出所:NTT、NEC

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