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2024年は「エッジAIデバイス元年」 主要AI PCを分解この10年で起こったこと、次の10年で起こること(87)(1/3 ページ)

さまざまなモバイル機器で、AI(人工知能)機能は既に必須になりつつある。特に2024年はAI PCが相次いで市場に投入され、「エッジデバイスAI元年」とも呼べるほどである。今回は、2024年後半に発売された主要AI PCやプロセッサを取り上げよう。

» 2024年11月27日 11時30分 公開
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 2024年の半導体業界はAI(人工知能)関連が完全にけん引する形になっている。AI機能を有するプロセッサ、AI対応の大容量DRAM(HBMやLPDDR5X)や細分化された電源制御を行う電源ICなどが、従来とは異なる規模でモバイル機器分野に搭載されている。生成AI(AIデーターセンター)の急速の進化とともにPC、スマートフォン、AR/VR(拡張現実/仮想現実)、ドローン、車載機器などにもAI機能が必須デバイスとして搭載され始めている。カメラやセンサーと連動するAIもあれば、ユーザーには見えないところで電波状況などを最適化するために機能しているAIもある。いずれにしても2024年は「エッジデバイスAI元年」と言えるほどに多くのプロセッサや製品が発売されている。そこで今回は、2024年後半に発売されたAI PCとプロセッサを取り上げたい。なお2024年11月に発売されたAppleの独自AI「Apple Intelligence」対応の「MacBook Pro」や「Mac mini」は来月、取り上げる予定だ。

モバイルAIがもたらした3つの変化

 モバイルAIはデバイスとして3つの大きな変化をもたらしている。1つはNPU(Neural Processing Unit)と呼ばれるINT演算やFP演算、MAC演算などを専用で行う演算器ハードウェアをプロセッサ上に搭載していること(ハードウェアが追加になっているので面積が増えてしまうので微細化製造は必須)、2つ目として並列性の高い大容量DRAMを演算器と対で搭載すること(各社とも2023年モデルよりもDRAMの容量が増えている。「Google Pixel 8」は12GB → 2024年モデルの「Google Pixel 9」は16GBなど事例は多数ある)、3つ目はキメ細かい電源制御を行うために膨大な数の電源ICがプロセッサと対で採用されていることである。プロセッサはNPUコアを増やし、DRAM容量は増え、電源ICも細分化され増加。モバイルAIは半導体の使用数量を確実に押し上げている。PC分野では「Copilot+ PC」(NPU 40TOPS以上)機能対応機種がAI PCとして2024年6月から発売されている。第1弾は本連載の7月記事で報告したように、Qualcommの「Snapdragon X Elite」が搭載されたPCのみが対応している状況であった。

Qualcommの「Snapdragon X」シリーズを搭載したASUSのAI PC

 図1は、2024年9月に発売になったASUSのCopilot+ PC対応「Vivobook S 15 S5507QA」の様子である。採用されているプロセッサはQualcommの「Snapdragon X Plus 8-CORE」。上記の「Snapdragon X Elite」の機能を落として廉価版にした仕様となっている。DRAMは16GBとなっている。ハイエンドノートPCが20万円超えと高価なので、10万円台でCopilot+ PCに対応しつつ、CPUやGPUに機能をデグレードしたものになっている。

図1:2024年9月に発売されたASUSの「Vivobook S 15 S5507QA」 図1:2024年9月に発売されたASUSの「Vivobook S 15 S5507QA」[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 表1は、2024年6月に発売されたQualcomm Snapdragon X Elite(上段)と9月に発売されたSnapdragon X Plus 8-CORE(下段)の電源系とプロセッサの様子である。Qualcommはスマートフォンでも電源系、通信系をチップセットとして取りそろえており、PC向けでもバッテリー充電やバッテリー管理、電源ICなどを豊富にそろえてプロセッサと組み合わせている。電源ICはトータルで8個搭載されていて、電池系は4個。ハイエンドのSnapdragon X Eliteと廉価版向けのX Plus 8-COREでも同じ電源ICやバッテリー系ICが採用されている。電源系の共通化はスマートフォンでも採用される手法だ。

表1:Qualcomm「Snapdragon X」シリーズの内部の構成 表1:Qualcomm「Snapdragon X」シリーズの内部の構成[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図2は、Qualcomm Snapdragon X Elite(左)とSnapdragon X Plus 8-CORE(右)のシリコンの様子である。ともにTSMCの4nm世代プロセスで製造されている。左のハイエンドX EliteはORYON CPUが12コア、Qualcomm独自のGPU Adrenoが12コア搭載され、CPUの最高周波数は4.3GHzとなっている。

図2:Snapdragon Xシリーズのシリコンの様子 図2:Snapdragon Xシリーズのシリコンの様子[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 右の廉価版X Plus 8-COREは、CPUが4コア減った8コア、GPUも5コア減った7コアとなっている。機能を落とすことでシリコン面積は約28%縮小され、最高周波数も4.0GHzに落とされている。Copilot+ PCの要件を満たすためにNPU性能は廉価版でもハイエンドと同じ45TOPSだ。シリコン面積を3割ほど減らすことでウエハーからの取得数が増え、テストパターンは多くを流用できるなどコストリダクションに大きく寄与し、10万円台のAI PCのプロセッサに対応するものになったわけだ。

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