スピントロニクスデバイス市場、2045年に10兆円台へ:2025年は5990億円規模と予測
スピントロニクスデバイスの世界市場は、2025年予測の5990億円に対し、2045年は10兆6540億円規模に達する見通しである。矢野経済研究所が調査し発表した。
矢野経済研究所は2024年11月27日、スピントロニクスデバイスの世界市場を調査し、2045年までの市場規模予測を発表した。2025年予測の5990億円に対し、2045年は10兆6540億円規模に達する見通しである。
今回の調査は、「スピンメモリ」や「スピン集積回路」「スピン熱制御」および、「量子スピントロニクス」の4カテゴリーを対象とし、メーカーの出荷金額ベースで算出した。調査期間は2024年1〜8月。
2025年に市場が形成されているスピントロニクスデバイスは、スピンメモリとスピン集積回路である。その内訳はスピンメモリが68.6%を占め、残りの31.4%がスピン集積回路とみられる。
スピントロニクスデバイスは、磁気メモリや磁気センサー、磁気トランジスタ、磁気トルクオシレーターなど、さまざまな分野でその応用が期待されている。また、IoT(モノのインターネット)やスマートホームといった用途でも、スピントロニクス技術を応用した高感度センサーの開発が進んでいるという。さらに、量子コンピュータの実現にも大きな役割を果たすとみられる。
こうした中で、スピントロニクスデバイスの市場規模は、2030年に1兆5610億円、2035年に3兆6560億円、2040年に6兆6740億円、そして2045年には10兆円台の規模に拡大すると予測した。
スピントロニクスデバイスの世界市場規模予測[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所
- 「超省電力」実現の鍵、スピントロニクス半導体の最前線を聞く
東北大学では、スピントロニクス半導体の研究が活発に行われている。ロジックLSIの消費電力を100分の1以下に削減できるスピントロニクス半導体は、さまざまなシステムの低消費電力化に大きく貢献すると期待されている。同大学の国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES) センター長 兼 スピントロニクス学術連携研究教育センター 部門長の遠藤哲郎教授に、スピントロニクス半導体の特長や活用について聞いた。
- 「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発
東北大学とアイシンは、エッジ機器に適した大容量MRAM搭載の「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発した。システム動作シミュレーションで検証したところ、従来に比べ電力効率は10倍以上、起動時間は10分の1以下となった。
- 「電流を流すだけで積和演算」 TDKの超省電力AI用デバイス
TDKは、スピントロニクス技術を活用するニューロモーフィック素子として「スピンメモリスタ」を開発した。AIで多用される積和演算を、GPUに比べて100分の1の消費電力で実行できるという。フランスCEAと東北大学との協業により、2030年の量産技術の確立を目指す。TDKは、スピンメモリスタのデモを「CEATEC 2024」で公開する予定だ。
- ADAS/自動運転用センサー、30年に約3.7兆円規模へ
ADAS(先進運転支援システム)/自動運転用センサーの世界市場は、2030年に約3兆7000億円規模に達する見通しだ。レーダーやカメラを中心に、今後も車載用センサーの需要は拡大し、2023年見込みに比べ約2.4倍の市場規模となる。
- ミニLEDとマイクロLEDディスプレイ市場、2031年には7930万台に
矢野経済研究所は、ミニLEDディスプレイとマイクロLEDディスプレイの世界市場(出荷ユニット数量)を調査した。2031年の市場規模は、ミニLEDディスプレイが5796万4000台、マイクロLEDディスプレイは2138万台となり、全体で約7934万台に達すると予測した。
- 次世代電池市場、2035年は7兆2763億円規模へ
矢野経済研究所は、主要9種類の次世代電池世界市場(メーカー出荷額ベース)を調査し、2035年までの市場規模予測を発表した。これによると、2023年見込みの1兆2333億円に対し、2035年は約6倍の7兆2763億円規模に達する見通しである。
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