縦軸にパッケージ当たりの計算速度を取ると、2010年代以降に大きな変化が起きていることが分かる(図4の上図)。2年で2倍の割合で増大していた計算速度は、AIの要求によって、2年で16倍もの計算速度になると予測されている。これが、新しいムーアの法則となる。
一方、パッケージ当たりの消費エネルギーを縦軸に取ると、2年で60%減少していたものが、AIの要求によって、2年で5倍増大することになる(図4の下図)。これはかなり危機的である。このパッケージ当たりのエネルギーの増大によって、半導体の発熱がとんでもないレベル(例えば原子炉の発熱レベル)になるからだ。
この対策として、光による通信が必須になってくる。現在のところ、データセンタ内のサーバとサーバの間、あるいはサーバに収納されているラックとラックの間は、電気ではなく光で通信するようになってきている。この先は、ラック内の各種チップ間を光でつなぐ必要が出てくるだろう。
このように消費エネルギーに大きな問題はあるものの、新ムーアの法則によって、どれほど高性能なコンピュータが出現してきたのか?
図5は、米国エネルギー省(United States Department of Energy、略称DOE)がスポンサーとなり、IntelとHewlett Packard Enterprise(HPE)が開発したスーパーコンピュータ「Aurora(オーロラ)」である。
Auroraの開発費は5億米ドルで、当初計算速度は2exaFLOPS/s(毎秒200京回の計算)だったが、2024年5月現在、1.012exaFLOPSを達成した。
このAuroraには、合計85K個のCPUとGPU、230PB(ペタバイト)のメモリ、230PBのストレージが搭載されている。要するに、Auroraは先端半導体の塊のようなものである。
Auroraに代表されるスーパーコンピュータが、「2年で16倍の計算速度」という新しいムーアの法則をつくり出している(あまりにも開発費が高すぎる上に、猛烈にエネルギーを消費するのは問題ではあるが)
このようなスーパーコンピュータには、最先端のLogic、DRAM、SSDなどの半導体が大量に使われる。そして、これら最先端の半導体の製造には、ASMLの最先端EUV露光装置が使われている(なお、SSDの中のNAND型フラッシュメモリにはEUVリソグラフィ技術は使われていないが、ロジックの1種のコントローラーの製造にはEUVが使われ始めている)
次ページでは、半導体の微細化に、EUVがどのように使われているか、あるいは、今後使われるようになるかを見てみよう。
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