東北大学と日本原子力研究開発機構、理化学研究所の共同研究グループは、表面弾性波(SAW)が、磁性材料を用いて作製した回折格子を通過する際に、「非相反回折」と呼ばれる現象が生じることを確認した。
東北大学と日本原子力研究開発機構、理化学研究所の共同研究グループは2025年1月、表面弾性波(SAW)が、磁性材料を用いて作製した回折格子を通過する際に、「非相反回折」と呼ばれる現象が生じることを確認したと発表した。SAWを利用した高性能フィルターなどの開発が期待される。
SAWは物質の表面に沿って伝搬する音波で、表面の原子が回転運動をしながら伝わる性質がある。この性質を利用して、不要な周波数の電気信号を除去するSAWフィルターなどが開発されている。音波や光が回折光子を通過した後に波同士が干渉すると、通常は特定方向に同じ強度の波が現れるという。
ところが、特定の条件下では非対称な回析が生じることも分かっていた。「非相反回析」と呼ばれるこの現象は、これまで光学分野で確認されていた。しかし、音波などそれ以外の波動では観測されていなかったという。
SAWは表面の原子が回転運動し、角運動量を持つ性質がある。この角運動量と磁性体が持つ角運動量の間の相互作用を考えると、回折波は非対称な振る舞いをすることも予想されていた。これを実証するため研究グループは、半導体微細加工技術を用いて、ナノスケールの磁性体を周期的に配置した格子を作製し、これを通過するSAWを測定した。
そうしたところ、上方へ回折されるSAWと下方へ回折されるSAWの強度は明らかに異なることが判明した。そこで、理論モデルを用い散乱強度を計算した。この結果、非相反回折をよく再現できることが分かった。これは、表面弾性波と磁性体における角運動量の相互作用が極めて重要であることを示すものだという。
今回の研究成果は、東北大学金属材料研究所の新居陽一准教授と小野瀬佳文教授、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所先端基礎研究センターの山本慧研究副主幹、理化学研究所創発物性科学研究センターの前川禎通客員主管研究員らによるものである。
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