電気通信大学と三菱電機は、磁気結合回路を等価な電気回路に変換する手法を共同開発した。磁気結合回路をグラフネットワークとして表現できれば、グラフニューラルネットワーク(GNN)を活用し、回路の寿命予測や自動設計などの精度向上が可能となる。
電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻の庄野逸教授と三菱電機は2025年2月、磁気結合回路を等価な電気回路に変換する手法を共同開発したと発表した。磁気結合回路をグラフネットワークとして表現できれば、グラフニューラルネットワーク(GNN)を活用し、回路の寿命予測や自動設計などの精度向上が可能となる。
アナログ/デジタル回路の設計者は、設計仕様に基づき試作やシミュレーションを繰り返しながら、その精度を向上させてきた。こうした設計者の負荷を軽減するため、機械学習の一種であるGNNによってグラフネットワークを処理する方法「Circuit2graph」を開発してきた。ところが、「磁気結合」を含む回路だと情報の欠損が生じるため、GNNでは特徴量を抽出するのが難しかったという。
庄野教授らは今回、単相および三相磁気回路に対する「等価回路」を提案した。これにより、磁気結合の情報を失うことなく、回路からグラフネットワークへの変換が可能となった。しかも、情報の劣化がないためGNNで最適化したグラフネットワークを磁気結合回路に戻すことも可能だという。
ただ、GNNはキルヒホッフの電流保存則を考慮しておらず、等価回路を適用するだけでは回路情報を失う可能性がある。これに対し今回は、等価回路を対称構造にすることでこれらの課題を解決したという。さらに、回路をグラフネットワークに変換する時に、情報劣化が少ないほどGNNで特徴量が得やすく、特徴量から算出される推論精度が向上しやすいと仮定。実験では、グラフ分類を用いて等価回路の有無に対する推論精度を評価し、その有効性を確認した。
磁気回路を含む3308個の回路を、今回提案した手法でグラフネットワークデータに変換し、GNNの学習に使用しないテスト用データで推論した。そうしたところ、これまで97.49%だった回路の分類精度が98.78%まで向上した。これは、磁気結合の情報がグラフネットワークとして適切に保持されていることを示すものだという。一方、非対称な等価回路では推論精度が96.71%に低下した。このことから、対称な等価回路を適用することが重要なことも分かった。
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