三菱電機は、欧州現地法人を通じて欧州「FLAGCHIP」プロジェクトに参画した。同プロジェクトでは、新たに開発する試験機を用い、パワー半導体モジュールに実装された半導体チップの温度を正確に推定する技術を実証していく。
三菱電機は2025年1月、欧州現地法人のMitsubishi Electric R&D Centre Europe(三菱電機欧州R&Dセンター)を通じて、欧州「FLAGCHIP」プロジェクトに参画したと発表した。同プロジェクトでは、新たに開発する試験機を用い、パワー半導体モジュールに実装された半導体チップの温度を正確に推定する技術を実証していく。
FLAGCHIPは、EUの研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」の中で、革新的なパワー半導体モジュールや同モジュールの状態を監視する技術を開発したり、再生可能エネルギーを用いた発電システムのコスト効率化を検討したりするプロジェクトである。
FLAGCHIPには、欧州9カ国から企業や学術機関など11のパートナーが参画している。同プロジェクトでは、ノルウェーとフランスのパートナー企業2社が保有する「風力発電システム」および「太陽光発電システム」を対象に、実証試験を行う。
こうした中で三菱電機は、パワー半導体モジュールに実装された炭化ケイ素(SiC)MOSFETの温度を、正確に推定する技術について実証実験を担当する。パワー半導体モジュールは、半導体チップとボンディングワイヤーの接合部に温度変化が生じると、機械的な疲労が蓄積し劣化の原因となる。
このため、パワー半導体モジュールの劣化状況を推定するには、接合部に近いところで半導体チップの温度変化をチェックしておく必要がある。三菱電機は、ゲート電流を印加して得られる電圧値を測定して内蔵ゲート抵抗の電気抵抗値を算出し、そこから半導体チップ(SiC-MOSFET)の温度を正確に推定する技術を保有している。
この技術を組み込んだ試験機を新たに開発し、実証試験に用いる。具体的には、フランスの風力発電システム向けDC-DCコンバーターの試験設備で、新たに開発する試験機を用いて、2026年10月より実証実験を行う予定である。ここで得られた半導体チップの温度推定結果については、英国ノッティンガム大学が担当するパワー半導体モジュールの劣化推定技術に応用していくという。
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