「2.2.1.4 ウェアラブルデバイス、ウェアラブル用電源の動向」の後半を紹介する。Appleの「Apple Watch Series 9」、Googleの「Pixel Watch 2」、Samsung Electronicsの「Galaxy Watch 6」を分解し、メイン基板と光電容量脈波センサーの実装状態を観察した。
電子情報技術産業協会(JEITA)が2年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2024年度版 実装技術ロードマップ」(PDF形式電子書籍)を2024年6月に発行した。既に6月11日には、ロードマップの完成報告会を東京で開催している(本コラムの第462回で既報)。
本コラムではこのほど、ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、前回の2022年度版に続いて今回の2024年度版も概要をご紹介できるようになった。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。
上記の経緯を経て、本コラムの第482回から、2024年度版のロードマップ概要をシリーズで紹介している。前回(第488回)は「2.2.1.4 ウェアラブルデバイス、ウェアラブル用電源の動向」の前半部分を簡単にご紹介した。今回は後半部分をご報告する。
前回で紹介したように、本ロードマップではウェアラブルデバイスの中でも進化が速い「スマートウォッチ(腕時計型ウェアラブルデバイス)」に注目した。具体的にはスマートウォッチの最大手ベンダーであるAppleの「Apple Watch」シリーズについて、最近のモデル(Series 7〜Series 9)を比較した。
今回はスマートウォッチの大手ベンダー3社が2023年秋に発売したモデルを報告する。2023年9月に発売されたAppleの「Apple Watch Series 9」と同年10月に発売されたGoogleの「Pixel Watch 2」、同年9月に発売されたSamsung Electronicsの「Galaxy Watch 6」である。これら3モデルを分解し、メイン基板と光電容量脈波センサー(PPG:PhotoPlethysmoGram)の実装状態を観察した。
興味深いことに、ベンダーが異なる3モデルの外形寸法と重量、モニター解像度はほとんど同じとも言えそうなくらいに似ている。強いて挙げるとGalaxyだけは少しだけ大きく、重く、モニターの解像度が高い。
メイン基板は「Apple Watch Series 9」だけが基板全体をオーバーモールドしてある。このため、モールド樹脂を剥がすことによってメイン基板の表面を露出させてから、外観を観察した。「Apple Watch Series 9」ではアプリケーションプロセッサ(AP)とその周辺回路に3次元実装を採用している。
メモリはBGAパッケージに収容した。BGAの内部ではNANDフラッシュメモリダイとSDRAMダイをフェースアップで積層してある。パッケージ基板の電極とメモリダイの電極はワイヤボンディングで接続する。
BGAパッケージのはんだボールはパッケージ基板の周辺部だけにレイアウトしており、中央の底部には空間を設けてある。この空間部分にアプリケーションプロセッサ(AP)のベアダイと電源管理IC(PMIC)のベアダイを横に並べ、プリント基板の電極とフェースダウンでフリップチップ接続した。APとメモリは、プリント基板の配線とBGAのはんだボールを介して接続される。
光電容量脈波センサー(PPG:PhotoPlethysmoGram)には、3モデルとも発光部にはRGB(赤色、緑色、青色)プラスIR(赤外線)の発光ダイオード(LED)を搭載する。発光波長が4種類もあるのは、血中酸素濃度の測定には多波長が必要なことと、スマートウォッチの装着時に発生する雑音に対する堅牢性(ロバストネス)を高めるためである。
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