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テラヘルツ波パルスを室温で高速、高感度で検出が可能に高圧電源内蔵THz波検出器を開発

浜松ホトニクスは、テラヘルツ(THz)波パルスを室温で高速かつ高感度に検出できる高圧電源内蔵のTHz波検出器として、「THz PMTモジュール」と「THz I.I.」を開発し、量産を始める。

» 2025年03月17日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

THz波-電子変換部をメタサーフェスに置き換え

 浜松ホトニクスは2025年3月、テラヘルツ(THz)波パルスを室温で高速かつ高感度に検出できる高圧電源内蔵のTHz波検出器として「THz PMTモジュール」と「THz I.I.」を開発し、量産を始めると発表した。

左がTHz PMTモジュール、右がTHz I.I.の外観[クリックで拡大] 出所:浜松ホトニクス 左がTHz PMTモジュール、右がTHz I.I.の外観[クリックで拡大] 出所:浜松ホトニクス

 従来の光電子倍増管(PMT)やイメージインテンシファイア(I.I.)では、外部光電効果の原理を用いる「光電面」によって光を電子に変換していた。ただ、従来の光電面だと検出できる光の波長域が紫外光から近赤外光までに限られ、THz波を検出することは難しかったという。

 新たに開発した「THz PMTモジュール」と「THz I.I.」は、これまで蓄積してきたPMTやI.I.の技術に加え、新たに開発したメタサーフェス技術を用いて実現した。浜松ホトニクスはこれまで、THz波に共鳴する微小なアンテナを利用した電界電子放出技術として、メタサーフェスをデンマーク工科大学と共同研究してきた。

 今回はこれらの技術を活用し、THz波-電子変換部をメタサーフェスに置き換え、アルカリ金属の膜を形成する独自の技術を融合することで、メタサーフェスの機能層を作製することに成功した。開発した検出器の評価を行うため、理化学研究所と共同で検出モジュールの特性を正確に測定する技術も確立したという。

THz PMTモジュールの使用イメージTHz I.I.を用いてTHz波ビームを観察する様子 左はTHz PMTモジュールの使用イメージ、右はTHz I.I.を用いてTHz波ビームを観察する様子[クリックで拡大] 出所:浜松ホトニクス
THz波の検出原理イメージ(左がTHz PMT、右がTHz I.I.)[クリックで拡大] 出所:浜松ホトニクス

PCとUSBで接続すれば使える

 THz PMTモジュールは、駆動回路や高圧電源を内蔵している。このため、PCとUSB接続するだけで使用できる。入射するTHz波強度に対して、出力電流が大きく変化するため、THz波の微小な変化を高い感度で検出できる。

 一方、THz I.I.ではTHz波ビームの形状や集光点を手元で観察できる。しかも、筐体が小さいため狭い光学系の間にも直接挿入することができる。また、最大で毎秒1000フレームの撮像が可能で、高速現象を捉えることができる。

 THz PMTモジュールの価格(税込み)は220万円で、既に受注を始めた。THz I.I.は330万円で4月14日より受注を始める。この他、電源非内蔵型のTHz PMTは180万円、THz I.I.用電源は22万円となっている。

THz PMTモジュールの仕様
THz I.I.の主な仕様 上がTHz PMTモジュール、下がTHz I.I.の主な仕様[クリックで拡大] 出所:浜松ホトニクス

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