マイコンを用いて低消費電力、低コストで実現する「エッジAI」への注目が高まっている。エッジAI向けマイコン「PSOC Edge」などを展開しているInfineon Technologiesの戦略とポートフォリオについて聞いた。
AI関連技術が急速に進展する現在、従来のようなクラウド上ではなくエッジデバイス上でAI推論を行う「エッジAI」への注目が高まっている。リアルタイム性やセキュリティの向上、電力効率の高さやコストの削減といったメリットがあるためだ。
中でも、マイコンを用いて更に低消費電力/低コストで行うケースも増加していて、マイコンを手掛ける各社はAI処理に特化したハードウェアや開発ツールの拡充を進めている。Infineon Technologies(以下、Infineon)のエッジAI向け戦略とポートフォリオについて、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン C3事業本部 マーケティング部のコントロールシステムズ マネージャー、高橋啓介氏に聞いた。
InfineonはエッジAI向けの戦略として、「最先端のエッジマイコンとハードウェアのポートフォリオ」「最先端のソフトウェアとツール」「適切なレベルのセキュリティ」を掲げている。
エッジAI向けハードウェアとしては、2024年3月に発表したマイコン「PSOC Edgeシリーズ」がある。第1弾である「PSOC Edge E84/E83/E81」にはベクトル拡張技術「Arm Helium」搭載の「Arm Cortex-M55/M33」を組み合わせたデュアルコアを採用。ニューラルネットワーク(NN)を加速させるInfineon独自のハードウェアアクセラレーター「NNLite」も搭載している。E84/E83にはArmのIP(Intellectual Property)であるNPU「Ethos-U55」も追加し、AI処理に特化している。
PSOC Edgeは汎用マイコンと比べて機械学習(ML)のパフォーマンスは480倍、遅延は100分の1以下になるほか、MPUと比べると消費エネルギーは90%削減できるという。
低消費電力/低コストであることも特徴だ。高橋氏は「あえてハイエンドのコアを使わず、通常のマイコンとしての処理能力は必要最低限にすることで、消費電力とコストを抑えている。NPUと組み合わせることで十分なAI処理性能を実現できる」と説明する。
高橋氏は「エッジAIにはMPUを用いる場合も多いが、Infineonはあくまでマイコンで実現する考えだ」と説明する。Arm IPのNPUを取り入れたのは「エッジAI市場ではArmコアが今後も広がり続けていくと想定し、コアとの統一性を持たせる狙いがある」(高橋氏)という。
なお、PSOC Edgeシリーズに加え、「Arm Cortex-M4/M0+」を搭載した「PSOC 6シリーズ」でもAI処理は行える。デバイスの異常検知や簡単な画像認識など、負荷の高くないユースケースに対応しているという。
PSOC Edge E84/E83/E81はいずれも2025年第2四半期から量産開始予定。「NPU搭載マイコンの中では量産開始時期が早い。顧客からも評価されている点だ」(高橋氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.