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「見えない領域」の情報を通信によって取得する協調型自動運転福田昭のデバイス通信(497) 2024年度版実装技術ロードマップ(17)

今回は、「協調型自動運転」に関する通信技術を解説する。協調型自動運転を支える通信技術は主に2つある。「V2X(Vehicle-to-Everything)」と「V2N(Vehicle-to-Network)」だ。

» 2025年04月22日 10時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

レベル4以上の自動運転を一般道路に拡大へ

 電子情報技術産業協会(JEITA)が2年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2024年度版 実装技術ロードマップ」(PDF形式電子書籍)を2024年6月に発行した。既に6月11日には、ロードマップの完成報告会を東京で開催している(本コラムの第462回で既報)。

 本コラムではこのほど、ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、前回の2022年度版に続いて今回の2024年度版も概要をご紹介できるようになった。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。

 上記の経緯を経て、本コラムの第482回から、2024年度版のロードマップ概要をシリーズで報告している。第494回からは、「2.4.2 自動運転・遠隔操作」の内容紹介を始めた。同項目は、「2.4.2.1 開発動向」と「2.4.2.2 要素技術」の2つのパートで構成される。最初のパートである「2.4.2.1 開発動向」は、「(1)自動運転レベルの定義およびAD/ADAS搭載オーナーカーの上市状況」「(2)自動運転に関する法規制整備状況」「(3)国内外のサービスカーの動向」「(4)通信技術と自動運転の最新動向」「(5)スマートシティ」から成る。

「2.4.2 自動運転・遠隔操作」の目次 「2.4.2 自動運転・遠隔操作」の目次[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2024年6月11日に開催された完成報告会のスライドから)

 前回は、「2.4.2.1 開発動向」の「(4)通信技術と自動運転の最新動向」に相当する部分を簡単にご報告した。具体的には、自動車が搭載する通信技術の従来動向と、「自律型自動運転」に関連する要素技術、「協調型自動運転」に関連する通信技術をご説明した。

 今回は、「協調型自動運転」に関する通信技術の続きとなる。「協調型自動運転」とは、自車両が周囲の道路状況を通信によって取得して運転操作に反映させる運転自動化システムである。前回でも述べたように、協調型自動運転を支える通信技術は主に2つある。1つは「V2X(Vehicle-to-Everything)」と呼ばれる、専用周波数帯域を用いた自動車と周囲(ほかの自動車や道路インフラ、歩行者など)の直接通信技術、もう1つは「V2N(Vehicle-to-Network)」と呼ばれる、携帯電話網と自動車を接続した間接通信技術であり、両者を連携させることでレベル4、さらにはレベル5の運転自動化を高速道路だけでなく、一般道路でも実現する。

V2X通信とV2N通信の役割分担と連携

 高速道路に限定しても、通信技術が必要となる状況は少なくない。例えば高速道路に一般道路から流入する車両に対し、高速道路の本線を走行する車両の情報(合流予定時刻における本線走行車両の有無など)を送信する(路車間通信(V2I:Vehicle-to-Infrastructure))。また、高速道路を走行する車両が急に減速あるいは停止したときに、見通しの効かない後方の車両に事態を送信する(車々間通信(V2V:Vehicle-to-Vehicle))。

 さらには移動サービスカー(無人運転バス、無人運転タクシーなど)を携帯電話網経由で遠隔操作・管理する(ネットワーク-車間通信(V2N:Vehicle-to-Network))。例えば高速道路の走行車線に工事区間が存在するとき、移動サービスカーをあらかじめ走行車線から右の車線に遠隔操作で移動させる。

高速道路における車載センサーとV2X通信、V2N通信の役割分担 高速道路における車載センサーとV2X通信、V2N通信の役割分担。横軸は時間。縦軸は通信システム間の連携(重なっている部分)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2024年6月11日に開催された完成報告会のスライドから)

 許容可能な時間(時間的な猶予)でみていくと、最も短時間(数秒未満)で車両を操作しなければならないのが、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)といった車載センサーによる安全装備になる。V2X通信による車両制御は数秒から数十秒の時間的な余裕がある。V2N通信は携帯電話網を経由するので、応答時間を保証できない。数十秒を超える時間的な余裕がある場合に限定される。

 なお、V2X通信を始めとする高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)には周波数帯域として当初、760MHz帯(755MHz〜765MHzの幅10MHz)が日本国内で使われていた。しかし国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R:International Telecommunication Union Radiocommunication Sector)がITS用の周波数帯域として5850MHz〜5925MHz(5.9GHz帯)の全て、あるいは一部の利用を考慮すべきとの勧告を出していることから、日本でも5.9GHz帯へのITS用周波数割り当てを検討することとなった。

 ITS用周波数帯域の割り当てと既存の無線システムの行方については、次回であらためて述べたい。

(次回に続く)

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