広島大学とフェニテックセミコンダクターの合同チームは、500℃の高温下でも動作する炭化ケイ素(SiC)集積回路(SiC-IC)を、量産工場で試作することに成功した。SiC-ICのファウンドリー立ち上げなど、社会実装に向けた取り組みが加速する可能性がある。
広島大学は2025年4月24日、500℃という高温下でも動作する炭化ケイ素(SiC)集積回路(SiC-IC)を、量産工場で試作することに成功したと発表した。試作は、トレックスグループの半導体受託製造企業(ファウンドリー)であるフェニテックセミコンダクターの6インチSiCパワーデバイス工場で行った。
広島大学は、500℃の高温や高放射線下でも動作できるSiC-ICの研究開発を手掛けていて、これまでは、同大学 半導体産業技術研究所のスーパークリーンルームでSiC-ICを試作してきた。ただし、SiC-ICの社会実装を進めるためには、ファウンドリーを立ち上げられるよう、量産ライン向けに製造プロセスを開発することも重要になる。
そこで広島大学は2024年5月、フェニテックセミコンダクターと合同チームを発足させ、SiC-ICの設計と試作を進めてきた。IC/デバイスの設計は広島大学が担当し、製造プロセスの検討は合同チームで行ったという。
フェニテックセミコンダクターでは、SiCパワー半導体を製造しているが、パワー半導体とSiC-ICは構造が大きく異なるため、製造プロセスも異なる。SiC-ICには多層配線を導入する必要もある。これらを合同チームで議論しながら、新たに製造プロセスを構築したとする。
今回、量産ラインで最初の製造が完了し、フェニテックセミコンダクターから広島大学へ試作ウエハーが引き渡された。これにより、量産ラインで製造したSiC-IC試作品からさまざまなパラメーターを抽出できるようになる。同大学によれば、SiC-ICの量産ファブでの試作製造は「世界初」だという。リリースで「社会実装のための重要な一歩になる」と語った。
今後はSiC-ICの大規模化を進めるとともに、設計/製造の環境整備も加速させていくという。
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