ところで、なぜソニーの半導体事業であるSSSグループとしてGPUサーバを取り扱うことになったのか。SSSは今回、オプションとして画像/動画の解析に特化した基盤AIモデルを提供することを発表したが、もともとはこのハイパースケールモデルのライセンス提供の構想が先にあったのだという(詳細は別記事「ソニーセミコン、ビジョンAI用の大規模モデルを提供へ」)
SSSは当初、GPUサーバを既に所有している顧客向けにAIモデルのライセンス提供を展開することを検討したが、柳沢氏は「GPUサーバを既に持っている企業/組織は少なく、またハイパースケールモデルをGPUサーバ上で動かすために必要なインフラエンジニアやAIエンジニアは日本で枯渇していて、『使いたいがエンジニアがいないため使えない』という声も多かった」と説明。こうした背景から、GPUサーバ自体の提供およびセットアップに加え、クラスタ環境構築やAI開発環境提供およびファンデーションAIモデル提供まで、全てをワンストップで提供することを決めたのだという。
サービスを提供するミドクラジャパンは、仮想化/コンテナ技術、分散コンピューティング、分散型AI技術に精通した10カ国以上のエンジニアを擁するミドクラグループの事業持株会社だ。同社は2019年にSSSが買収し100%子会社となっていて、現在はAITRIOSの中核開発を担っている。ミドクラが専門とするのはインフラ構築であり、GPUサーバのセットアップおよびクラスタリング、AI開発環境構築などにおいて、そのノウハウを活用していくとしている。
柳沢氏は「Supermicro側も日本国内の拡販では、GPUサーバを立ち上げられるインフラエンジニアを擁するプレーヤーを必要としていた。今回、良い形の補完関係になると、非常にポジティブに目を付けてもらえた」と語っていた。
SSSは、こうした短納期やワンストップ提供の体制を強みに事業を展開/拡大していく方針で、具体的なターゲットしては主に3カテゴリーを想定する。1つ目は、大規模なGPUサーバ購入を計画している、クラウドサービスを提供するデータセンター企業だ。
2つ目はトヨタ自動車やホンダなどの自動車メーカーやNEC、富士通などといったラージエンタープライズで、柳沢氏は「彼らは自社でデータを保持するためオンプレミスでデータセンターを構築することを望んでいて、その余力もある。ここに採用されれば大きな案件になるとみている」と説明。GPUサーバ提供でもファンデーション(基盤)AIモデル提供の面でも「最も大きい案件になってくると想定している」という。
3つ目は中小企業やスタートアップを含めた小型のエンタープライズで、1案件の規模は小さいものの顧客数は最も多いと想定。既にこのカテゴリーにおいて顧客も獲得しているといい、柳沢氏は「ここから実績を増やし、1、2つ目のカテゴリーまで波及できるよう努めていく」と述べた。
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