Micronの最新決算は、2024年12月〜2025年2月の3カ月で、売上高は前年同期比38.3%増、メモリの市場成長率を上回っている。
HBMで先行するSK hynixの伸び率に及ばないものの、Samsungの伸び率を大きく上回っている、という点では「勝ち組」と考えて良いだろう。ちなみに2025年3〜5月期の業績予想は、同29%増程度の伸びが見込んでいる。
AMDの2025年1〜3月期売上高は、前年同期比35.9%増。ロジックの市場成長率にほぼ匹敵する。AMDの売り上げの大半はロジックではなくマイクロにカウントされること、そのマイクロの2025年1〜3月期市場成長率はWSTSによれば前年同期比4.1%の伸びにとどまっていることを考えれば、AMDの実績は「勝ち組」に属するだろう。
競合するIntelの売上規模には遠く及ばないものの、時価総額ではIntelを大きく上回っている点をみても、株式市場から「勝ち組」として評価されていることが分かる。
Mediatekの2025年1〜3月期売上高は、前年同期比14.9%増。ロジックの市場成長率に比べて見劣りする。
伸び率だけで言えば「負け組」ということになるが、MediatekはQualcommと同様、スマホ向けの売上比率が高いと推定されるメーカーである。スマホの需要が伸び悩む中、この実績は健闘していると見ることもできよう。
以上、大手半導体メーカー10社の直近の売り上げ実績を紹介したが、「勝ち組」としてNVIDIA、TSMC、SK Hynix、Micron、AMDの5社、「負け組」としてSamsung、Intel、Qualcomm、Broadcom、MediaTekと評価してみた。「勝ち組」の共通点は、データセンター向けのビジネスが好調に推移していることに尽きる。一方の「負け組」は、データセンター向けのビジネスを手掛けているのに伸び悩んでいるSamsung、Intel、Broadcom、スマホ向け需要が伸びない中でむしろ健闘しているQualcomm、MediaTekと、内容的には必ずしも共通していない。
データセンター向けの需要は当面好調に推移し、スマホ向けの低迷もしばらく続く、と筆者は予測している。その中でデータセンター向けの波に乗れない3社が今後どのような打開策を講じるのか。スマホ向けを中心とする2社が、今後どのような分野に事業展開するのか。ぜひ注目したい。
ここで気になるのは「トランプ関税」の影響である。半導体および電子機器を対象としたトランプ関税は、米国企業や米国民への負担が相対的に大きくなるため、実行に移すのは困難だろう、と筆者は予測している。だが、大統領の行動は予測がつきにくく、ここでは「静観する」とだけ申し上げておきたい。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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