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M3 Ulra搭載「Mac Studio」を分解 M3 Maxとはどう違う?この10年で起こったこと、次の10年で起こること(92)(3/3 ページ)

» 2025年05月27日 11時30分 公開
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チップとインタフェースを分析

 図5はM3 Ultra版Mac Studioの内部に採用されているチップと接続関係である。中央にあるのがM3 UltraおよびUnified Memory。中央下部に接続されている5基のApple製電源ICが電源制御を担っている。左側と右上部はレガシーインタフェース。MARVELLやPARADE、ASMEDIAなどWindows系PCでもおなじみのメーカーのチップが採用されている。

図5:Mac Studio M3 Ultra版の基板裏面の端子[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 表2は、2023年のM2 Ultra版Mac Studioと、2025年のM3 Ultra版Mac Studioの内部比較である。ほぼ同じ形状、サイズとなっている。しかし見た目はほぼ同じでも、随所が1.5倍以上になっている。最小構成のメモリは64GBから96GB、最大構成では、192GBから512GBとなっている。CPUコア数も24基から32基、GPUも76基から80基と増えている。M2 Ultraが5nm製造に対して、M3 Ultraが3nmになることでより多くの機能やメモリインタフェースをほぼ同じ面積に搭載できるようになったからだ。半導体の微細化は、確実に機能アップに直結しているわけだ。今後2nm、1.6nm、1.4nmなどの微細化でも従来路線同様に進化が続いていく(既にターゲット数字やロードマップは製造各社から発表されている:詳細省略)。

表2:2023年版、2025年版のMac Studioの内部の比較[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 表3は2023年のM2 Ultra版Mac Studioと、2025年のM3 Ultra版Mac Studioのプロセッサ以外のApple製チップの一覧である。電源ICは全てApple製、Appleのロゴマークがパッケージに刻印されている。M2 Ultraは4基の電源ICであったが、M3 Ultraでは5基と電源IC数が増えている。よりキメの細かい電源制御を行うために増加されたものとなっている。またThunderboltインタフェースも入れ替わっている。こちらはパッケージにAppleロゴはないが、シリコンを取り出してシリコン上の型名を観察すればAppleチップであることが明確になる(いずれも開封して確認済みだ)。

表3:2023年版、2025年版のMac Studioの、プロセッサ以外のApple製チップ一覧 表3:2023年版、2025年版のMac Studioの、プロセッサ以外のApple製チップ一覧[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図6は今回報告の本命のM3 MaxとM3 Ultraの関係である。詳細はぜひ有償のテカナリエレポートで確認いただきたい。結論から言えば、M3 MaxとM3 Ultraに搭載されるM3 Maxは全くの別シリコンである。M3 Ultraに採用されるM3 Maxは、Ultra Fusionインタフェースを付加した別物(内部演算器は共通)”仮称M3 Max2“が採用されている。シリコンが大きくなった分、サイズから計算すると1枚のウエハーから取得できるシリコン数が9%程度減ったものとなっている。2種のシリコンを別々に開発したわけではなく、両仕様を最初から想定して、Ultra Fusion有無を作り分けたものと思われる。ちなみにM3 Ultraのパッケージ内部には2つのM3 Max2を接続するための、シリコンインターポーザー(激薄)と62個のシリコンキャパシターが埋め込まれている。製品仕様に合わせ、2種シリコンを作り分けるというAppleの高い開発力が明らかになった!!

図6:M3 Max(2023年)とM3 Ultra(2025年版のM3 Max)の違い 図6:M3 Max(2023年)とM3 Ultra(2025年版のM3 Max)の違い[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 次回はNVIDIAのGPU「GeForce RTX 50XX」シリーズと、AMDのGPU「Radeon RX 9070」について報告したい。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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