半導体pn接合デバイスで室温スピン伝導を初観測:スピンTFET実現に向けた第一歩
大阪大学と熊本大学、東京都市大学らの共同研究グループは、半導体pn接合を有するデバイス構造において、室温(27℃)環境でスピン伝導を観測することに初めて成功した。新型の半導体スピントロニクスデバイス「スピンTFET」を実現するための第一歩となる。
大阪大学と熊本大学、東京都市大学らの共同研究グループは2025年5月、半導体pn接合を有するデバイス構造において、室温(27℃)環境でスピン伝導を観測することに初めて成功したと発表した。新型の半導体スピントロニクスデバイス「スピンTFET」を実現するための第一歩となる。
次世代の省電力デバイスとして、消費電力が極めて小さい演算機能と不揮発性メモリ機能を兼ね備えた半導体スピントロニクスデバイスが注目されている。研究グループはこれまで、半導体ゲルマニウム(Ge)と高性能なスピントロニクス磁性材料(強磁性ホイスラー合金)を直接接合した構造を開発し、「室温スピン伝導」を実証してきた。ただ、pn接合を有するデバイス構造での「室温スピン伝導」は、これまで観測されていなかったという。
そこで今回は、量子力学的バンド間トンネル(BTBT)伝導を利用して電流変調を行うトンネルFET(TFET)技術を、半導体スピントロニクスデバイスに応用した。新たな構造を提案したことにより、Ge pn接合におけるBTBT伝導を介した「室温スピン伝導」の観測に初めて成功した。
半導体pn接合デバイスにおけるスピン伝導の観測温度[クリックで拡大] 出所:大阪大学他
Ge pn接合を介したスピン注入技術の模式図[クリックで拡大] 出所:大阪大学他
今回の研究成果は、大阪大学大学院基礎工学研究科の大木健司氏(博士後期課程)、上田信之介氏(博士前期課程)、浜屋宏平教授、同大学先導的学際研究機構スピン学際研究部門の宇佐見喬政講師、熊本大学半導体・デジタル研究教育機構の山本圭介教授、東京都市大学総合研究所の澤野憲太郎教授らによるものである。
強磁場で超伝導ダイオード効果を示す素子を開発
大阪大学と東北大学の共同研究グループは、鉄系超伝導体であるセレン化・テルル化鉄「Fe(Se,Te)」を用いた薄膜素子を作製し、1〜15テスラという強い磁場中で、「超伝導ダイオード効果」を観測した。
新たな手法で半導体と金属界面の接触抵抗を測定
京都工芸繊維大学らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所やトリノ工科大学らと協力し、半導体と金属など異なる材料間の界面における接触抵抗を直接比較できる、新たな「界面物性評価手法」を開発した。
スマホに高度なAIモデルを実装できる? アナログメモリスタの抵抗制御技術
大阪大学の研究グループは、アナログメモリスタの抵抗レベル数を大幅に増やすことができる新たなアルゴリズムを開発した。スマートフォンやIoT機器などにおいて高度なAIモデルの実装が期待される。
電源不要で薄型軽量のARメガネを実現する新技術
東京大学と大阪大学、クラスターおよび、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンによる共同研究グループは、電源が不要で薄型軽量を可能にする拡張現実(AR)ディスプレイ技術を用いた「ARメガネ向け薄型受光系」を開発した。
東北大学ら、テラヘルツ光で光ダイオード効果を観測
東北大学と静岡大学、大阪大学および、神戸大学の共同研究グループは、コバルトオケルマナイトにおいて、テラヘルツ光の一方向透過性(光ダイオード効果)を観測した。また、理論計算により一方向透過性と特異な吸収の起源が「自発的マグノン崩壊」であることも明らかにした。
半導体応用も可能な二硫化モリブデンナノリボンを合成
九州大学や名古屋大学、東北大学らによる研究グループは、二硫化モリブデンの極細構造(ナノリボン)を、化学蒸着法により基板上へ高い密度で成長させることに成功した。このナノリボンは、水素発生で高い触媒活性を示し、電子移動度の高い半導体としても活用できることを示した。
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