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高解像度で「最速」の車載用SPADセンサー、ソニーはいかに実現したか25Mポイント/秒で測距(1/2 ページ)

ソニーセミコンダクタソリューションズが自動運転の本格化に向けて、車載センサーの大幅な性能向上を実現した新たに開発した車載LiDAR向けの積層型dToF方式SPAD距離センサーは、高解像度と「最速」(同社)のフレームレートを両立、ポイントレートは2500万ポイント/秒を達成している。今回、開発者に話を聞いた。

» 2025年06月13日 10時30分 公開
[永山準EE Times Japan]

 ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、ソニーセミコン)が、自動運転の本格化に向けて、車載センサーの大幅な性能向上実現した。新たに開発した車載LiDAR向けの積層型dToF(直接Time of Flight)方式SPAD距離センサーは、高解像度と「最速」(同社)のフレームレートを両立、ポイントレートは2500万ポイント/秒を達成している。この性能をどのように成し得たのか、今回、開発者に話を聞いた。

車載LiDAR向けの1型 積層型dToF方式SPAD距離センサー「IMX479」[クリックで拡大] 車載LiDAR向けの1型 積層型dToF方式SPAD距離センサー「IMX479」[クリックで拡大 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

自動運転に向け、「他にはない性能」を業界に示す製品

 モビリティが自律的に運転操作を行う自動運転レベル3以上の実用化に向け、道路状況や車両、歩行者など対象物の位置や形状を高精度で検知/認識可能なLiDARの重要性が高まっていて、さらなる技術進化が求められている。

 そうした要求に応える製品としてソニーセミコンが開発したのが、車載LiDAR向けの1型 積層型dToF方式SPAD距離センサー「IMX479」だ。その概要は下記記事で紹介したが、520dToF画素のSPAD距離センサーとして「最速」(同社)という20fpsのフレームレートを達成したほか、垂直方向における0.05度相当の角度分解能、5cm間隔の距離分解能、37%という高い光子検出効率、最大300mの検知距離などを実現した製品だ。

 ソニーセミコンは2021年9月にも車載LiDAR向けの積層型dToF方式SPAD距離センサーとして「IMX459」を発表していたが、IMX479ではさまざまな性能を大幅に向上させている。同社は「IMX479はフラグシップに位置付けられる製品で、競合で同様の性能を実現するSPAD測距センサーはない」と強調。「先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)を見据え、当社の技術によってここまでの性能が出せると業界に示し、トレンドをリードしていくような製品だ」としている。

「最速」の実現にはイメージセンサーのノウハウが

 では、具体的にどのような技術によって、これらの性能を実現したのか。

 まず高解像度については、裏面照射型のSPAD画素を用いた画素チップと、「新開発の測距処理回路」などを搭載したロジックチップを、Cu-Cu接続を用いた積層構造により1チップ化。これによって10μm角の画素サイズで520dToF画素の高解像度を実現した。

 なお画素サイズはIMX459と変わっていないが、その数および構成が異なる。IMX459はラインスキャンおよび2Dスキャンの両方に対応するものとして開発されていて有効画素は横597×縦168という構造になっていたが、IMX479は長距離向けとして採用されるラインスキャン方式に特化した形で開発していて、横105×縦1560と縦長の構造をしている。

 もちろん画素数の増加は処理するデータの増加を意味する。そのためにソニーセミコンは今回、測距処理回路を新開発。複数処理を並列化し、高速処理性能を向上させることに成功した。

 この「複数の処理」とは、具体的には3つに大別される。1つ目はLiDARでレーザー光を照射し、反射して戻ってくるまでの時間を測る処理、2つ目はそこで得られたデータの信号処理、3つ目はセンサーからそのデータを出力する処理だ。この3つを並列化することで、高解像度かつフレームレート20fpsが実現できたという。ソニーセミコンの車載事業部 車載商品設計部の由井達哉氏は「この複数処理の並列化は、いわゆるパイプライン処理という、当社のイメージセンサーなどでよく採用されている処理方法だ。今回はこれを車載向けSPAD距離センサー用に新たに開発し搭載した形だ」と説明。ここでも同社が強みを持つイメージセンサー事業で培ってきた技術が生かされていることを強調していた。

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